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【三歩】-31
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突如、スピーカーから女の嬌声がきこえた。リズミカルな音と一緒に、呻くような声が途切れ途切れに押し出されている。だがそれが苦しいだけのものでないことは幸平だって理解している。女の喜悦の声は次第に大きくなっていった。一方で時折きこえる相手の声は、何かを必死で堪えているように低くくぐもっている。
「さぁ、始まった」
男は何のためにこんなものを用意したのだろうか。まだこれが男同士のそれならば興奮剤のひとつにでもするつもりなのだと理解もできる。幸平は意図が掴めず、下から涼しい顔をしている男を睨みつけた。
「そんな目で見ないでくれ。君のために大変な思いをして編集したんだ。感謝してほしいくらいだよ」
『あ……すごい……気持ちいい……』
男の吐息に被さるように再び女の声がきこえてきた。しかしとっくの昔に女の体では興奮できなくなっている幸平にとって、女の声は雑音も同じだ。それどころか嫌悪を覚えるほど不快な音にまでなってしまっている。
しかし次の瞬間、無理矢理耳奥にねじ込まれた女の声に、幸平は体を震わせた。
『や……洋之……あ……そこっ……んっだめっあ、あぁ……ん』
洋……之?女は今、相手を洋之と呼んでいなかったか?幸平は煩く鳴る心臓を蹴散らしながら、無心で相手の男の息遣いに耳を澄ました。
『あ……俺も……っ気持ちいいよ……もう、イっていい?』
『あっんっだめ……もっと……洋之……や……』
「そ……んな」
疑いようがなかった。これは洋之だ。
一度音声は途絶え、僅かな空白を挟んだ後にスピーカーからはまた別のベッドシーンの声がきこえてきた。相手はもちろん洋之とさっきの女だった。
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