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【二歩】-12
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洋之は自分が緊張していることに気がついた。屋上に呼び出されて告白される前のような緊張感だ。覗き見している洋之の存在感に気がついていないはずなのに落ち着かない。
幸平の顔がゆっくりスマホの画面に近づいていくのを、洋之は固唾を呑んで見守った。何をしようとしているのかこの時にはすでに理解していたし、理解した上でその瞬間をしっかり見届けたいと思っていた。
洋之が布団を握る手に力を込めると、幸平の唇が音もなく画面に触れた。写真の洋之にキスをしたのだ。
洋之の心臓は飛び出さんばかりに鳴り響いていた。このままでは幸平にきこえてしまうのではないかとぎゅっと目を閉じ身を硬くする。それでも胸の高鳴りは抑えることができなくて、酸欠になるんじゃないかというくらい布団に顔を埋めて、短く呼吸を繰り返した。
一連の行動を見ていた洋之は犯人が幸平だと確信した。しかしその真実を不思議と不快には思わなかった。それよりも自分の写真にキスをしている幸平の姿が、切り抜いて強力な接着剤で貼り付けたように、いつまでも瞼から離れなかった。どんなグラビアアイドルよりも破壊的で、蠱惑的だった。
胸の鼓動と比例するように洋之の雄は膨らんだ。パンツの下で張り裂けんばかりに勃起した性器は堪らなく痛かったが、この場ではどうすることもできなくて、幸平が寝に入った後、あたかもトイレに起きたような素振りをしながら洋之は布団から抜け出した。
トイレに駆け込み、一刻を争うように怒張した性器を握りしめれば、数度擦り上げただけでびっくりするくらい呆気なく射精した。快感は一瞬だったが、しかし洋之はこの短かすぎる行為にとても満足していた。これほど興奮することはこの先二度とないだろう。それくらいあの背徳心の滲む行為は、若くて苦い経験だった。
洋之は幸平の想いに気づくと同時に、兄をひとりの男として初めて意識をしたのだ。
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