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【二歩】-28
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宮原の質問の合間に、洋之は宮原の元妻との出会いや離婚に至った経緯をきいた。
初めこそ口籠もっていたが、途中から吹っ切れたように宮原は話し出した。大学で知り合った彼女は明るく奔放で、でも気遣いもできて、学部内では男女問わず人気者だったんだそうだ。
二人は映画が好きという共通の趣味から自然と仲良くなった。付き合うのも自然の流れだったらしい。しかし大学を卒業すると別々の道に進んだ二人の関係はこれも自然と消滅してしまった。
嫌いになって別れたわけではない二人が再開したのは二年後の同窓会。この頃フリーだった二人は飲み会の後、ホテルに泊まり一夜を明かした。付き合おうといったわけではないが友達以上の微妙な関係はその後も続いていたそうだ。
一年が経ち、結婚したいといいだしたのは相手の方だった。いつまでもこの関係を続けていくことに申し訳なさを感じていた宮原は、何の戸惑いも躊躇いもなくわかったと頷いた。
結婚生活も始めは順調だった。歯車が狂い始めたのは赤ちゃんが欲しいと妻にいわれてからだった。自然にできるだろうと思っていた赤ちゃんは一年経ってもできることはなかった。
二年目、意識して頑張ったがやはりつくることはできなかった。これは何か原因があるのでは、と二人で病院にいったところ、告げられたのは非閉塞性無精子症という病名だった。
これをきいて洋之は納得した。離婚したのだと洋之に告げたあの時、僕が悪かったといった宮原の言葉の理由が。と同時に自分を追い込み、散々苦悩しただろうということも。
それから赤ちゃんをつくるための話し合いも幾度となく二人の間でなされたが、気持ちが纏まらないまま体の関係だけがなくなっていった。そして体の関係と共に心にも距離ができていったのだという。
そんな時妻の浮気が発覚した。宮原は何もいえず家を出て行く妻の背を見送ったのだそうだ。
「町田さんとお会いした頃、だいぶ弱ってたんですよ。あの時は偉ぶって町田さんの話し相手になりますよなんて上からな物言いをしてしまいましたけど、本当は自分が話をきいて欲しかっただけなんです。町田さんの気持ちを利用するようなことをしてしまってすみませんでした。お兄さんに対しても、申し訳なかったです」
「いえそんなことは。それなら私だって宮原さんに謝らないと。話し相手がいないなどと同情を引くようなことをいって宮原さんを誘ったんですから」
「そうだったんですか?」
「えぇ、まぁ、話し相手がいないのは本当のことですけどね。でもどうしてもまた会いたかったので」
宮原の顔が赤くなったような気がするのは少々期待し過ぎだろうか。それでも同性にこんなことをいわれても嫌がる様子がないところをみると、少しくらい手応えは感じてもいいだろう。
宮原が幸平に会いたいといった時点で、何か宮原の中に変化があったのでは?と思っていた。もしかすると……と、ともすれば期待してしまいそうになる自分を叱咤して今日に臨んだのだ。
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