アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
【二歩】-30
-
それから絶望は時間差でやってきた。洋之をこれでもかと隙間なんてないくらいぎゅうぎゅうに圧迫する。いい訳など何も浮かばないが、それでもとりあえず謝らなくてはと駐車場を目指して歩き出す。
数歩進んだところで焦る洋之の頰をさっきよりも強い風が鋭く撫でていった。一瞬、幸平の笑い声がきこえた気がして、洋之は立ち止まると幸平の墓石を振り返った。
確かに幸平の仕業、と思えなくもなかった。嫉妬した幸平が宮原に乗り移って洋之に幻覚を見せたのだ。だとすればそんなに嬉しいことはない。だが、実際に洋之が触れたのも、愛してると告げたのも幸平ではなく宮原なのだ。
五分起きに電話をかけたが繋がることはなかった。今晩泊まる予定のホテルに行ってみても姿はない。時間がきて仕方なく実家に戻ったものの、洋之の心境は複雑だった。
法要が終わって会食が済むと、洋之は再びホテルへ車を飛ばした。まだチェックインしていなくても、今度はホテルのロビーで待たせてもらおうと思っていた。そうすれば絶対に会えるはずなのだ。
しかしいくら待っても宮原は姿を見せなかった。洋之を警戒しているのだろうか。晩ご飯はホテルの近くの居酒屋でとるつもりで予約までしていたが、予定していた時刻になってもやはり宮原は来なかった。
ここまで連絡が取れないとなると、今度は不安のほうが強くなる。もう一度フロントで確認すると、「先ほど宿泊キャンセルの電話がありました」とあっさり告げられた。
目の前が真っ暗になり、ふらつきそうになって洋之は慌てて近くの壁に手をついた。そんなくたくたな洋之を、かっちり制服をきめこんだフロントの女性が心配そうに見つめている。
宮原はいったいどこへ行ってしまったのか。全く当てがなくなってしまい、洋之は覚束ない足どりで車へと戻った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
68 / 84