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湯浴みを終え椿の間へと戻る途中、牡丹と鉢合わせをしてしまった。
夜通し田沼に責められ啼かされたのだろう。
瞼は腫れ、化粧はぐしゃぐしゃ、落ち窪んだ眼には暗い光が宿り瘴気を撒き散らしながら不幸が歩く。
娼年をその瞳に捉えた牡丹は立ち止まり、ニヤリと嘲笑う。
掠れた声で呪いを吐くその姿に、娼年は憐れみと愛しさを感じた。
慈愛の笑みを送る娼年に牡丹は毒を吐く。
娼年の耳に言葉は届くも、響きはしない。
ただすり抜けていく言葉は、娼年の胸の内にわだかまる澱である。
市助に引き摺られるようにして去って行く牡丹を娼年は見送る。
「牡丹はきっと、もっとずっと美しくなるだろう。あの身の内に巣食う毒と上手く付き合えれば、な」
すっかり姿が視えなくなったところで、娼年はポツリと呟いた。
弥七は何も言わず娼年の背を押し、椿の間へと戻ることを促す。
可哀想な牡丹を視て安堵するのは、愛しいと感じるのは、牡丹の中に自分を視ているからなのだろう。
「可愛いのは我が身か、牡丹か………」
溢れる言葉は拾われず消えていく。
椿の間。
弥七が襖を開け、娼年は中へ入るのをほんの一瞬、躊躇した。
瞼を閉じて、中へ入る。
窓辺に向かい、男を視る。
その背中を弥七が見詰める。
はらはらと溢れ落ちる涙を拭うこともせずに娼年は弥七へ訥々と語り出す。
「眩い光に、私は焦がれた。あの太陽に………触れれば焼きつくされると解っていて、それでも、嗚呼………求めてしまった私はなんて、愚かな。けれどね、弥七………」
振り向き、娼年は凄艶に笑う。
不安定な娼年を弥七は心から美しいと思った。
「私は、お前も欲しくて堪らない」
「ふ、ははは………」
弥七は笑う、狂ったように………
はらはらと落ちる娼年の涙。
弥七は一歩、二歩と足を進める。
「安心して、壊れて行けば良い。お前がどんなになろうとも、私は最後までツバキを愛で育て、世話をすると言っただろう」
娼年の涙を弥七が啜る。
「………触れられるのが、恐い」
吐露される娼年の心に弥七は震える。
「抱かれたいと望む癖に、光を穢すのが恐いんだ」
悩み苦しみ足掻けば足掻くほどに増す娼年の危うい魅力。
瞼に唇を押しあて弥七は娼年の帯をするりと解いた。
「………お前と居ると、安心する」
濡れた瞳が弥七をうつす。
するすると腰紐を解き、はだけた衿から覗く柔肌に掌で触れる。
身に纏う衣が畳に落ちて娼年の周りに歪な楕円を描く。
「弥七、弥七………」
甘えすがる娼年の腕を取り、弥七はその指先に口づけをする。
「閨の稽古だ。さあ………」
「………あっ」
押し倒され、娼年は小さく喘ぐ。
淫蕩に耽る二人の瞳が絡み合い、肉の悦びに躰が淫らに踊る。
「ツバキ………」
弥七が名を呼ぶと娼年は顔を綻ばせそれに応える。
娼年の脚は弥七の脚に、娼年の腕は弥七の背中へと回され密着し荒い息遣いに快楽を求める二人の鼓動はどんどんと速くなる。
「………あっ、ぁ………」
仰け反り喘ぐ娼年の躰に独占欲を刻みつけながら、弥七は深く深く娼年の中を抉った。
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