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鍵と錠前の役割についてSS2
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堅物君×怪物君(仮)SS
結末として。
二年前、西の罵闘羅(バトラ)と東の暴れ竜の戦い(タイマン)は、罵闘羅の不参加という歯切れの悪い結果に終わった…。
…と、いうことになっている。
「…まさか、男子トイレの個室で再戦しているなんざ、誰も思わんよな。」
嘲り混じりで呟く東の暴れ竜…こと、浅利龍臣に僕、梓川大雅はたまらずキレた。
「この体勢で…っ、よくそんな、悠長な話出来るな…ッ!!っぁあ…!!」
俺達二人は今、龍臣が言った通り、男子トイレの個室、蓋をした洋式便器の上に座っている。龍臣が下で、僕が彼の膝上に乗っけられ、悶えている。誤解を避けるために言うが、服は脱いでいないし、そういった行為は一切していない。なら、僕のこの過剰ともいえる反応は何なんだと御思いの方もいると思う。
驚くなかれ、龍臣は…、僕の『鍵』なのだ。
この世には、第二の性別が存在する。
男女とは別に、『扉』というものがある。
これは、人口の約四分の一に当てはまる。
性別問わず、『扉』は当てはまる。
そのメカニズムは謎に包まれているが、現在研究で把握されているのは以下のとおりである。
『扉』は二種類に分けられる。
『錠前』と『鍵』である。
『錠前』は、一般人より秀でた力を持っているが、そのため複雑な事情を持つ者が多くあり、生まれながらの『錠前』としての性格もあり、他者に心を開かないものが多い。
『鍵』は、一般人とそう変わらないが、『錠前』と少しでも肌を合わせると、彼らを発情させ、基本的には本心を聞くことが出来る。半強制で、素直にさせられるのだ。
また、『鍵』と『錠前』は二種類の人間がいれば、『鍵』が『錠前』から本心を聞き出せるのかというとそうではない。
それぞれに決まった『鍵』と『錠前』があり、運命的に惹かれ合った二人にしか、その本質は発揮されない。
よって、一生の内で運命の『鍵』や『錠前』に出会う頻度は低く、大方の人間が自分を『鍵』や『錠前』であったことも忘れて、その一生を終える。
…本当はそのはずだし、僕だってそうでありたかった。
中学一年の僕の結果は、『錠前』。龍臣は『鍵』だったらしい。
中学三年、この辺じゃ有名だった東西の戦いは、東の不参加という不毛な締め括りで終わった。僕らはお互い、ケンカとして顔も知らないまま、高校に進学したわけだが。
龍臣の野郎…、どこか遠巻きに僕を見ていたらしい。
それでも高校一年の際には、僕の眼鏡と髪型を徹底して変えるというイメチェンに騙されたわけだが…。高校二年、同じクラスになって勘づかれた。こん畜生…っ。
まあ…、クラス委員長として、気づかずに不良である龍臣を散々追っかけ回した僕も僕なんだが…。それにしても、東の暴れ竜がこんなダウナーなヤツだなんて思いもしないだろ、普通!!こいつ、覇気なさ過ぎ!!
でェ、秘密を握られた僕は、ヤツが黙っている代わりに『一日一回1ハグする』という謎なミッションを課せられたわけだが…。妙な嫌がらせだな、と思って要求をのんでしまった過去の自分を、今はぶっ飛ばしたくて仕方ない。
龍臣は僕が、自分の運命の『錠前』だと気づいていた。
だからこうして、男子トイレの個室というムードもへったくれもない場所でも、僕は…その…興奮、してしまう。
制服…黒い学ランの裾から侵入してきた龍臣の手に、その柔らかな愛撫に、僕の身体は情けないほどに反応する。
「たつ、おみ…っ!!はら…腹まさぐンの…、それ、やめてぇ…ッ!!」
切羽詰まった甲高い声が出てしまう。龍臣の愉快そうな熱い吐息が、僕の耳元にかけられる。
「ん…??委員長チャン、これ好き??」
「好き、じゃな…っ!!」
途切れ途切れに自身の唇から漏れ出る吐息が…灼熱だ。
「…けど、すんごい淫乱な顔している。」
「…っ」
龍臣が僕の顔を覗き込んでくる。黒々とした瞳が、真っ直ぐに僕を射抜く。
「…綺麗。」
「…っんぁ…。」
龍臣に背後から抱きすくめられて、散々歯の浮くような甘い台詞をかけられて。
理性や官能が、これでもかとぐずぐずに甘く蕩かされる。
「…かわいいね、委員長チャン。」
恭しく口づけられて、気分が、全身の温度が急上昇する。
「…たつ、おみぃ…っ!!」
涙目になって彼を見る。さっき触れ合った唇が、ぬらぬらと卑猥に輝いていた。
「…唇、ど、したの??…リップ塗った??」
龍臣そんなケアするヤツだったっけ、と今にも途切れそうな意識で問いかけてみる。すると。
「ああ、これ??…さっきコロッケパン食べたから。その油じゃない??」
「・ ・ ・。」
ものの見事にムードブチ壊しの答えが返ってきた。
「…ねぇ、委員長チャン。もっかいキス…。」
「ふんぬッ!!」
「ぅがぁ…ッ!!」
僕は全身全霊で、身体に鞭打ち、相手の顔面めがけて渾身の頭突きをすることに成功した。
「痛ェ~!!」
「今日はここまで!!…一回一回が長すぎるンだよ、バカ!!」
一声叫んで、僕は相手の膝から下りて、自分で個室の施錠を外し、情けない男の元を去っていく。
開け放たれた個室の扉から、きっと焦って身繕いしているだろう、男のみっともない声が追いかけてくる。
「ちょ…っ、委員長チャ~ン??どうしたの、今いい雰囲気だったじゃん!?なんで!!?なんで逃げんの!!?」
「胸に手ェ当てて考えろや!!」
僕は一言毒づいて、教室へと戻っていく。
「…アブね~。」
高校の廊下を肩で風を切りつつ、進んでいく。
「…流されて、惚れるところだった。」
ダメだダメ、と僕は自分に言い聞かせる。
龍臣と僕は、脅す側と脅される側。
それ以下でも以上でも、イケナイんだから…。
〈堅物君×怪物君(仮) おしまい〉
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