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本当に可哀想だったね…
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逸郎が教えてくれないのなら、母に聞いてみよう。
あの頃の英介は逸郎にベッタリだったので、母も逸郎の事を覚えているだろう。
いや、そもそも、好み云々以前に、イッちゃんだと知って家庭教師に是非とお願いした可能性もある。
——いや、それはない。
もし、そうだとしたら、隠し事の下手な母親がそのことを言わないはずがない。
ならば、母親が気付かない事も気になる。
目つきが変わったと英介が感じた様に、逸郎は見た目も相当変わっているのでは無いだろうか。
いざ、母に確認してみようと思い一階へと続く階段を降りている時、英介のスマホにメールが届く。
差出人は逸郎だった。
"親とかには言わない方がいいぞ"
の一言だけだった。
バカな子供英介がこの一言で、理解できるわけが無い。
"言えるわけないじゃん(゚Д゚)"
"馬鹿か。キスのことじゃない"
"(。´・ω・)ん?"
"多分、顔見知りだって知ったら、交代させられるから"
"あ、そういうことか!(`・v・´)ゞ了解☆"
そう送った後は待っても返信はなかった。
せめて"またな"とか"ちゃんと自習しろ"とかでもいいから言って欲しいと、一抹の寂しさと共にスマホを尻ポケットに突っ込んだ。
言葉の裏を読めなんて、英介くらいの年頃には無理な話なのかも知れない。
馬鹿で鈍い英介なら尚更だ。
「イッちゃんって覚えてる?」
逸郎にそう言われたものの、やはり、母に聞いてみたい思いは消えず、夕食時にさりげなく切り出してみる。
「えっ?イッちゃん?」
母の訝しげにも見える顔は、単にイッちゃんを思い出せないだけか、それとも何かを疑っているのかわからないが英介は焦った
「そうそう。先生の名前って逸郎って言うから、逸郎なんて名前、珍しいじゃん?そう言えば、イッちゃんも逸郎だったなぁって思って、なんとなく思い出したんだよね。急に居なくなったから、どうしたのかなぁ?と思って…」
用意していた言い訳を一気にまくし立てれば、余計に怪しく見えるが、英介の母は顔も性格も英介のそっくりでどこかぼんやりしていた。
「あぁ、あー、ああ、イッちゃんね…」などと、口の中で呟いてから、困った様に眉を寄せる。
「本当に可哀想だったね…イッちゃん…」
「え?」
明らかに同情を含んだ表情と言葉に、英介の鼓動が早まった。
「あれ?あんた覚えてないの?」
「覚えてるも…何も…」
「そうか、英介、まだ小さかったもんね…」
そこまで言うと、母は納得した様に頷いた。
やはり、何かを思い出し、哀れんでいる様な表情を浮かべたまま——
どうも気になる。
英介は身を乗り出した。
「俺、急にイッちゃんがいなくなっちゃった事しか知らないよ。ちょっと、教えてよ」
「でも、人様の事、悪く言うのもね…」
「なに?なんなの?教えてよ!」
母の勿体ぶる様な態度に、焦れるあまり身を乗り出し過ぎたらしい。
今度こそ、訝しげな顔をされてしまった。
「なに…そんなに必死になって…まさか、あの逸郎くんって……そう言えば、似てるもような…」
「いやいやいやいやいやいや…全然似てない!あんな怖い目してないし!イッちゃん!」
大袈裟な否定は更なる怪しさを呼ぶが、母のぼんやりした性格も英介に負けず相当だったらしい。
「言われてみればそうか…」。と頷くと、
「もし、あのイッちゃんだったら流石にね…」
と、嘲る様に笑った。
それも衝撃的だったが、その後の話はもっと衝撃的だった。
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