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馬鹿すぎて………殴りたい…
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テスト一日目、教科は現代文、日本史、化学。
英介にとって、あまり苦手ではない科目ばかりだった。
とは言うものの、英介の「結構出来た!」は赤点は免れたかな?と同義である。
英介は勉強が出来るか出来ないかで言えば、恐らく馬鹿ではない。
暗記科目については、高得点も夢じゃない程、記憶力はいい方である。
なので、やれば出来るのだ。
実際に、高校入試の際の成績は上位であった。
だが、高校に入学してからは全くと言っていい程勉強をしなくなった。
テスト前ですら教科書を全部学校に置きっ放しにする始末。
それは、なにも英介が不良グループの仲間入りをして、反抗しているからではない。
とことん抜けているのだ。
そのせいか、応用力がない。
故に数学が絶望的に出来なかった。
一年生の年度末考査では、半分以上が赤点。
補習によって、なんとか進級は出来たものの、いつまでも数学だけパス出来ず、一時は留年の話も出たくらいだった。
そこで登場したのが、家庭教師と言う訳だが——
それが逸郎と気付き、完全に甘えていた。
逸郎のやる気の問題もあるだろうけど、そちらにばかり気を取られて、肝心な勉強は全く頭に入っていない。
このままじゃ、確実に赤点。
そうなれば逸郎は契約解消。
そして、外では会ってくれないとも言っている。
そうなれば、また失う。
再会の喜びも伝えられないまま、また逸郎が消えてしまう。
その結果、出た言葉がこれだった。
"助けて>_<"
自分でもとことん甘えていると思う。
それでも、頼ることしか出来なかった。
この10年余りの話は聞けていない。
だからこそ、英介の中で逸郎は未だヒーローのままだったのかも知れない。
まさにそれを裏付ける様に、連絡をした直後、逸郎から電話があり、居場所を聞かれた。
そして、逸郎はすぐに駆けつけてくれた。
流石に怒鳴りながらではないが、その姿を見た瞬間、英介は5歳の自分に戻った様な錯覚を覚えた。
気がつけば駆け出して、あの頃様に脇腹に縋り付く。
条件反射の様に涙が溢れ出し、口から不安が零れ出した。
「俺……このままじゃ……また、イッちゃんに会えなくなる……」
しゃくり上げながら英介がそこまで言うと、頭上から深いため息が聞こえた。
「馬鹿すぎて………殴りたい…」
抑揚のなく放たれた言葉は、とてもヒーローのセリフではなかった。
泣いている間頭を撫でてくれない事も含めて、英介の心臓が切なさにはち切れそうになる。
涙で濡れた瞳を上げると、少し困った表情の逸郎が映った。
英介の視線に気付き、目が合うと、一瞬だけ表情を緩めた後に逸郎が口を開く。
「母さんに電話しろ」
「え?」
「うちでやるか、英介ん家行くか決めろ」
そんなの決まってる——
英介は、返事もせずに夢中でスマホを操作し始めた。
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