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イッちゃん!イッちゃん!
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それが悪いことだとは思っていなかった。
何故なら、子供だったたからだ。
ただ、周りと違う事が面白かった。
理由なんていつも単純なのだ。
英介は周りの児童に比べて成長が遅く、体が小さい上にお漏らし癖があり、更には親たちが僻みも含めて煙たがっている新参者の一人だった。
それだけ条件が揃えば、ターゲットとして不足はない。
いじめているなんて意識があるはずもなく、単にからかって遊んでいると言う意識だったのかも知れない。
少しちょっかいをかければ、こちらの思惑通りに泣き出したりして、それが楽しかったのだと思う。
そして、そんな風に自分の思い通りの反応を見せてくれれば、愛おしくて仕方がない。
達也にとって英介は、間違いなく好きな子だった。
好きな子はいじめたい。そんな感覚だったはずだ。
幼さ故、それが恋愛感情に繋がる事はない。
どちらかと言えば、お気に入りのおもちゃに近かったのだろう。
幼稚園ではもちろん、帰宅後も近くの公園に引っ張り出して遊ぶのが達也の日課だった。
そんな達也を、当初健一はただ傍観していただけだと思う。
小学生になると、何故か幼稚園児とは違うのだと言う変なプライドが芽生える。
達也のすること全てをガキ臭く感じていた。
しかし、ある日を境に健一も英介いじりに参加する事になる。
弱きを守る正義の味方の登場だ。
達也がいつも通り英介にちょっかいをかけて泣かせていると、突然登場した正義漢にリコーダーで殴られ、逆に泣かされてしまった。
最初は自分の弟と言うより部下を擁護するつもりや自分と同じ古参の住人である逸郎が英介の肩を持つのが気に食わなかったのだが、いつの間にかその構図は変わっていた。
自身が悪役となっている認識は少なからずあった。
それでも、正義の味方の登場までに英介をどれだけ虐めてやれるかと言う賭けの様な感覚もまた楽しかったのだろう。
逸郎が登場すれば、立ち向かわずに逃げる。
単なるガチンコ勝負をしてしまったら、決着がついた時点でこの遊びが終わってしまうことに幼いながら気付いていたからだった。
英介にとっては迷惑な話だが、逸郎と健一のライバルごっこのだしに使われていたのだった。
だが、そんな日々も長くは続かず、正義の味方は突如姿を消してしまった。
決着もつけずにいなくなった逸郎に対し、健一は英介同様、裏切られた気持ちになった。
その鬱憤を英介にぶつけた事もあったが、ライバルが来なければ張り合いもなく次第に英介と関わるのを避ける様になっていった。
だが、単に英介を気に入っているだけの達也は相変わらずで、助けが来ないにも関わらず英介は毎日泣かされていた。
正義の味方がいなくなったのをいい事に、いじめがエスカレートしたと言うことはない。
いや、もしこの時に健一が気付かなければそうなっていた可能性もある。
救いを失った英介の様子が尋常でなかったのは、幼い健一の目にも明らかだった。
間もなく小学生になろうとしているのにも関わらず、体は小さなままで、それどころか、日に日に小さくなっている様にも見えた。
軽く小突かれただけで「イッちゃん!イッちゃん!」と泣きわめき、酷いときは処構わずお漏らしをした。
健一はその頃、逸郎がいなくなった事情と言うのを理解できないまでも親から聞いていたのもあって、誰かが逸郎の代わりをしなくてはいけないと言う気持ちがあったのかも知れない。
男ばかり三人兄弟の家庭で、兄の言葉は絶対だったため、言いつけ通り達也は英介をいじめるのを控えた。
控えたと言うのは、もちろん急に手の平を返した兄の態度に納得がいっていなかったからだ。
だが、成長するにつれて、自分がしている事に子供臭さや、独占欲を満たすには庇護の方が効率的だと気付いたのだろう。
健一の思惑通り、小学校高学年に上がる頃には、達也が逸郎の代わりを務める様になっていた。
だが、恐らく英介の中では逸郎の代わりとなる者などいなかったのだ。
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