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英介…好き…
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健一は不思議な奴だな…
ぼんやりする頭で、逸郎はそう思っていた。
どこかルカに似てるとも思ったが、すぐに頭から追いやった。
アルコールのせいもあってか、結局、自分が同性愛者である事も告白していた。
だが「マジかー」の一言で終わってしまった。
偏見がないとか、そんな大それた事ではなく、恐らく健一にとって他人の性癖などとるに足らない事なのだろう。
「他人の目?気になるなら隠せばいいじゃん」
「バレたらバレたで、その時じゃん」
「勘違い?恋愛なんて最初はそんなもんじゃん」
自分が気にしてた事を全部笑い飛ばされてしまったら、もう何も言えない。
むしろ、自分が悩みが恥ずかしい言い訳にしか思えなくなる。
いや、実際そうなのだろう。
終盤はだいぶ酔いが回っていたため、本人が覚えているかは謎だが、最後に言われた言葉が逸郎の中でグルグルとまわっていた。
「正直、初恋の人をずっと思い続けていられるなんて羨ましいわ」
初恋?と逸郎は首を傾げたが、健一曰く、英介と逸郎共にあの頃から思いあっていて、今でも思い続けているのだと言う。
言った後「お前ら気持ち悪ぃ~」と仕切りに言っていたが、確かにその通りだ。
初恋と言う点には素直に同意しかねる。
だが、気持ち悪いと言う点は大きく頷ける。
そんな少女趣味な話、不気味以外の何物でもない。
そうやっていくら否定しようと思っても、実際にそのあり得ない様な人生を送っていたのは自分なのだ。
だからと言って、今更開き直れる筈もない。
健一の様にそうなった時はそうなった時として、欲望の思うままに突き進めたらどれだけ幸せだろう。
「俺は、ずっと英介が好きだったのか…」
そう呟いてみたら、なんだか笑えた。
わかりきっている事なのだ。
幼いころからずっと。
そして、英介も自分を好いていてくれている事もわかっていた。
逸郎はシンプルなパイプベッドに寝ころびながら、手を伸ばした。
視界に自分の筋張った手の甲が映る。
その手を握れば、簡単に届きそうな欲しかった物が目の前にあるような気がした。
だが、逸郎はその手を握る事を躊躇う。
いつもそうだった。
健一とは真逆と言っても過言ではない性格。
幸せに素直に縋る事よりも、逃げ出す道を選んでいた。
暖かな思いが怖い。
誰かから差しのべられた、暖かな手を握るのが怖い。
その手が冷たくなるのが怖い。
その手から温もりが離れる事がもっと怖い。
一番怖いのは、その手から温もりを奪ってしまう事なのかも知れない。
思えば英介の事を考えると、いつも泣きたくなった。
それはきっと、逸郎が唯一、奪ってしまった温もりの思い出だったからかも知れない。
一度ならず、二度までも。
「英介…好き…」
呟いてみても、いつ零れてもおかしくない涙はいつまでたっても零れなかった。
逸郎は初めて―死にたい…と思っていた。
そんな気持ちすら、おかしくて、伸ばした手を開いたままそっと下ろした。
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