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【1】獣人専用・添い寝リフレ
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昨日も残業、今日も残業。多分、明日も残業。連日続く残業でくたくたになった身体を引きずるようにして、オレは会社から駅までの道を歩いていた。
疲れた。とにかく疲れた。疲れた、と考えることすら疲れた。今はただ、優しくて大きくて温かい何かに包まれて癒されたい。その何かに具体的な心当たりがあるわけではないけれど……その時、裏路地に光る看板が視界に入った。
『獣人専用・添い寝リフレ』
添い寝か、いいな。ここならオレの疲れを癒してくれるかもしれない。疲れ切っていたオレは、引き寄せられるようにふらふらと店に吸い込まれていった。
元々、人族しか居なかったこの国が、国交を開いてから約二十年。今では、新天地を求めて、獣人の国からの移住者も増えた。かくいうオレも、そのうちの一人だ。
獣人は人族より身体が丈夫で体力がある、というのがこの国の獣人に対する一般的な認識だ。だけど、それは肉食系獣人の話だ。オレはウサギ獣人……草食系獣人だ。身体的な能力は、人族とあまり変わらないか、もしかしたら雑食種である人族のほうが体力があるかもしれない。
それなのに、毎日毎日、職場で上司から「獣人だから、このくらいできるだろ」と言われて、他の人の二倍も三倍もの業務が割り当てられる。できて当たり前、できなければ罵られるというオプション付きで。お前ら、獣人に夢を見すぎなんだよっ!! と、怒鳴り散らしてやりたいけれど、せっかくこの国で見つけた仕事を失うのは怖い。今日も終電近くまで粘ってなんとか業務を終えて帰るところだった。ノーと言えないウサギ獣人、辛い。いや、ウサギ獣人でもノーと言える獣人(ひと)はいるはずなので、これはオレ個人の性格の問題なのかもしれないけれど。
獣人の国では草食動物であるオレは非力すぎて大したことができない。だけど、人族の国なら、何か大きなことを成し遂げられるのではないかと夢を抱いて故郷を出てきたのが3年前。それから、オレはずっと社畜をしている。毎日、仕事、仕事と仕事に追われる日々。人族は獣人に夢を見すぎだとは思うけれど、オレも人族の国に夢を見すぎていたのかもしれない。
路上に出ていた安っぽい電飾看板に導かれて雑居ビルの階段を上がると、2階のドアに先程見た看板と似たようなデザインで『獣人専用・添い寝リフレ』と書かれたプレートがぶら下がっているドアがあった。オレはドキドキしながらそのドアを開けた。
「お客さん、ハジメテ?」
「あ、はい」
入口の受付にいたのは、小柄でちょっと丸っこいシルエットの中年の男性だった。こんなところに居るので、もしかしたらこの男性も獣人なのかもしれない。
獣人が人族の国で生活するための条件はただ一つ。耳と尻尾を自分の意思で隠せるかどうかだ。耳と尻尾を隠してしまえば、人族と獣人は見た目では区別がつかなくなる。ちなみに言語は共通語を使用しているので問題ない。多少、出身地の名の訛が出ることはあるが。
「ハジメテなら、初回割引のコースがオススメだヨ」
「じゃあそれで……」
料金システムについて説明をされたけれど、全然頭に入ってこない。とりあえずオススメをきいて、それにした。
「あとは、誰にスル?」
パネルに写真が並んでいた。光っている写真と暗くなっている写真があるので、光っている獣人(ひと)の中から選べということだろう。とにかく、今、オレは獣人(ひと)肌が恋しい。癒してくれるなら誰でもいい。というか、なんか疲れすぎていて、もう自分で何かを選ぼうという気力がない。
「えーっと、抱き着き甲斐があるおっきめの獣人(ひと)がイイです……」
パネルの写真を見ることなくオレがそう言うと、「こちらに記入しテ、少々お待ちください」と言われた。渡された紙の一番上には「カウンセリングシート」と書かれていて、サービス中に呼ばれたい名前や、種族、して欲しいこと等を書くアンケートになっていた。オレはそれに記入すると、受付に提出して代金を支払った。
しばらくしたら「準備ができタので、こちらにお越しください」と言われた。受付の男性に案内されたのは、ひとつ上のフロアにある一番奥の部屋だった。
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