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【1】新規の客
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「わぉ、本物の石油王じゃん。おにーさん、なかなか気合入ってるね!」
セーラー服を着たオレの目の前に居たのは、事前に聞いていたとおり『石油王』だった。
真っ白なワンピースのような服。頭にも白い布が乗っていて、それが黒い輪っかで留められている。服に覆われていない場所からは褐色の肌が見えていて、誰もがイメージする、ザ・石油王といった格好をしている。
歳は20代後半くらいだろうか。大学生のオレよりは年上に見える。キリッとした眉毛に、スッと通った鼻筋、肉厚の唇……顔のパーツは全体的に大きめで、一般的な日本人に比べれば濃いめだけれど、凛々しくて好感が持てる。がっちりとした体格で、獅子を思わせるようなしなやかな体つきをしている目の前の相手は、オレの好みのど真ん中で、思わず心の中で舌舐めずりをした。
オレ──志貴野侑李(しきのゆうり)は男性向けコスプレ風俗で働いている。
てっとり早く大学の学費を稼ぎたかったというのもあるし、オレの性的嗜好が同性……ゲイだったからというのもある。今まで恋人といった存在も居たことがないので、こういった店に居れば好みの相手に出会えるかなといった打算もあった。
というのも……オレはチビなのだ。単に背が低いというだけではない。セーラー服を難なく着こなせてしまうくらい華奢な体形、顔立ちも中性的というより女と見間違えられることが多いくらいだ。顎ラインまで伸ばした髪は地毛なので、Tシャツとジーパン姿で街を歩いても、ノンケの男にナンパされることがよくある。
ちなみに女装は趣味だ。といっても、別にオレは女になりたいわけじゃない。自分に似合う服を追求したら、女性モノだったというだけだ。
まぁ、そういった外見なので、出会いを求める場に行くと必ずといっていいくらい、女役を求められるのだけど、違うんだ。オレはこんな外見をしているけれど、男に抱かれたいんじゃない。男を抱きたいんだ。
それで、この店の面接のときにオーナーにそれを訴えたら、「いやぁ、キミ、いいねぇ……!! めっちゃ需要あるよ!!」って言われて、『男の娘S攻め』キャラで売ることになった。オーナーの見立ては正しくて、入店してから三ヶ月でオレはナンバー入りした。しかもオレ自身、そのキャラ設定は性癖に合っているみたいで、楽しく働かせてもらっている。
そして入店から半年経った今では、オレはナンバーワンにまで登りつめていた。
オレの出勤日は、常連さんの指名で全部予約が埋まってしまっている。だけど、今日は教授の都合で大学の午後の授業が突然休講になってしまった。そんな時、オーナーからタイミング良く追加出勤の打診が来たので、二つ返事で出勤することにしたのだ。
新規客の相手をするのは久しぶりだ。
どんな客なのか訊ねてみたら、オーナーから「今日は石油王が来るからヨロシクー」と言われた。どういうことかと思っていたけれど、オレが待機している部屋にやって来たのは、マジで石油王の格好をした男だった。しかも、妙にクオリティが高い。コスプレ風俗にコスプレで来るなんて、なかなかノリのいい客だ。
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