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すれ違い11
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「意味わかんねぇ!だってお前、俺のこと嫌いでイジメてたんだろ!?」
「……なんで?」
「だって俺のこと追いかけて楽しんだり、写真とって脅迫に使おうとしてたし。あと弁当を喰って俺を嘲笑ってただろう!」
「そう思ってたの?」
「……違うのか?」
俺の言葉に苦笑をもらして、袖を掴んでいた手をそっと握ってくる。びっくりして身を引こうとしたが、逆に強く引きよせられて渉の顔が視界に広がる。相手の整った顔に今更驚いたとき、優しく囁く。
「嫌いな奴に、こんな執着しない。俺は……鳴海さんが好きだよ」
告白でなくてもしれっとした顔で好きと告げられて、反射的に頬が暑くなるのを感じた。
掴まれた腕からそれが伝わりそうで、恥ずかしさに視線をそらす。だがよく考えてみると恥ずかしがる意味なんてないと、顔を振って気を取り直す。
「じゃ、俺を追いかけてたのは?」
「鳴海さんと一緒に帰ろうとするのに、逃げるから」
「じゃ、写真を撮ってたのは?」
「携帯の待ち受けにするため」
「じゃ、俺の弁当を喰ってたのは?」
「鳴海さんの手作り弁当が好きだから」
今までの行動すべてにそんな説明を付加されれば、俺の妄想が全てチンケな思いこみであったことが判明する。
たしかに先入観だけで渉を判断しすぎたのかもしれないと、反省の意味を込めて握ってくる手を握り返す。再び視線をまっすぐに捉えた。
「お前って、馬鹿だな」
「……あの日助けて笑いかけてもらってからずっと好きだ。だから、本当はもっと笑ってほしかった……けど、いつもその反対ばかりだったな。ねぇ、鳴海さん。どうしたら、笑ってくれる?」
そう聞いてきた渉の顔がいつもの悪党めいた無表情の顔から、年相応のものに変わりつい噴き出しそうになる。それを押さえながら、咳払いをして今まで溜めこんでいた鬱憤を晴らす。
「じゃあ。まずは俺を追いかけるな、写真を撮るな、弁当を奪うな。以上!」
今まで溜まっていた鬱憤を全てさらけだしてすっきりした俺がどうだと視線を投げかければ、予想に反し眉間に皺を寄せてかぶりを振った。
「最初の二つは譲歩するけど、お弁当は譲れないね。なんなら、高級料亭の重箱を注文してくるから、お弁当は交換して。あんたの弁当が食べたいんだ!」
「あのさぁ、もっとあるだろ、他の考え方が……」
呆れてため息もでない。
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