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最後の鬼ごっこ①
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昼休みのチャイムがひと気のない校舎に鳴り響く。それが聴こえると同時に駆けだし、鳴りやむと同時に三年A組の教室にたどり着く。
午前の授業終了によって、教室から生徒の声と群れが廊下へ溢れだしてくる。俺はその人ごみをかき分けて、到着した教室に入る。
鳴海さんの座っている窓際、最後の列の席に歩みよる。石本鳴海、俺の好きな人。
「鳴海さん、飯喰いに行こう」
俺が現れれば教室中にいた女生徒が五月蝿く取り囲んでくるが、それを無視して彼に笑いかける。すると、華が咲いたような眩しい笑顔を向けてくれる。
「お前相変わらず早いな」
「鳴海さんにいつでも会いたいって、思ってるからね」
「はは、冗談やめろよ」
冗談ではない、いつだって本気。彼は気付かないけどね。
俺が自嘲の笑みを浮かべていたら、鳴海さんが弁当の入っているリュックを背負おうとする。そのリュックを横から奪うと、代わりに肩へと背負う。
いいよと取り返そうとするが、それをうまくかわす。それでも鳴海さんはしつこく諦めないので、しばし二人で小さな闘いを繰り広げた。だがひとつ前の席に座る星野さんが、あんぱんの包装を開けながら俺たちの頭を小突いてきた。
「イチャラブは昼飯食ってからにしろよ、二人とも」
あんぱんをくわえて俺たちがいつも昼飯を食べている屋上へ、先に向かって行ってしまう。
「イチャラブとか、してねぇから!」
鳴海さんが彼の背中にむかって、吠えたてる。だが、照れる彼と肩を並べその手をとった。
「いいじゃん。ラブラブしようよ」
その手を恋人握りにして目の前へ持ってくれば、彼は顔をさっと赤らめ振り払ってきた。
「止めろ!恥ずかしいだろ!」
「なんだ、残念……」
いつもながらの反応に小さくショックを受けながら、走り出した鳴海さんを追いかける。これが、俺と鳴海さんの最近の日常。
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