アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
入隊の遊戯
-
彼が買われた腕とは、剣術でも武術でもない。この場にいる三人はそれを理解している。
ここクオーレ地区には《 クルバン 》と言う慣習があり、彼のような青年がこれまで幾度となく連れられて来たからだ。
シアンは頭部まで覆っていた肩布に手をかけ、ゆっくりと捨て去った。
すると、それまで隠れていた華奢な首筋が現れる。
首半分ほどの長さに切られた生成(キナリ)色の髪は繊細で、覆う布が除かれたことでフワリと広がった。
横に流れる前髪に隠された目元は、彼の動きに合わせて隙間から現れては、見物人に流し目を送る。
そして白晢の肌。
無機質にも感じる色味の無い身体をしているが、自ら衣を脱ぐ手つきは、とぐろを巻く蛇のように滑らかで生々しい。
一気に頭から引き抜いても良いところを、彼はわざわざ時間をかけて…ひとつづつ留め具を外し、布を足元に落としていった。
「ヒュー…」
壁際に立つ衛兵が尖らせた口で笛を吹いた。将官の部屋であることも忘れ、このストリップショーに釘付けのようだ。
布を巻き付けただけの簡素な服がほぼ開け(ハダケ)ると、局部のみを隠す下着の上に腰骨を覗かせ、彼は前に歩き出した。
まだ左半身に残ったままの布地を引きずりながら、椅子に座る男の元へ近付いてゆく。
「……!?」
頬杖を付き一部始終を見届けていた男は、この時、シアンの顔を見てさらに目を丸くした。
赤い
白い身体に白い布切れを纏う、その美青年の唇だけが、いつの間にやら鮮やかな赤色に変わっているのだ。
シアンは右の親指を口元に運び
「──…」
その赤色を拭う──否、塗り広げている。
さらにそれを片目の目尻にも同様に塗り付けていた。
紅(ベニ)でも隠し持っていたのだろうか?
“ 違う紅ではない。あれは……血? ”
男は感動に似た思いでうち震えた。
こちらがストリップに目を引かれている間に、この青年は自らの唇を噛み切り、滲み出た血を口紅代わりに使ったのだ。
正気とは思えない。
だがシアンは痛みなど微塵も感じさせない笑顔のまま、小首を傾げて目の前で立ち止まる。
「僕の顔……ナニか、可笑しなところがありますか?」
「…っ…い、いや、問題ない。続けろ」
「ふふ……」
シアンは片膝を椅子にかけると、足を広げて座る男に擦り寄った。
下からすくい上げるような角度で相手を見上げる。
このまま唇を重ねるつもりかという近さまで迫っておいて…触れることはせず、震える吐息を零すのだった。
そして相手から視線をそらさずに、その衣服に手をかけた。
絹地でできた長丈のカフタンに掌を添わせ、片手で器用にボタンを外していく。外す過程で…衣越しに男の腹部を撫でながら。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
9 / 107