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味見
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──…
「取れ、隊服だ」
司令部を後にして宿舎へ向かったシアンは、先程の衛兵が案内人となり彼を先導していた。
「とりあえず見習いのだがな。礼服は後日用意させる」
「服など何でも構いませんよ」
「…っ」
着崩した衣から見えるシアンの胸元をチラチラと覗きながら、男は鼻の下を伸ばしている。
シアンはそれに気付いているのかどうなのか…淡々と隊服を受け取った。
「……そっちの腕も使えるのか?」
「無いのは肘より下からなので。…手首と指は自由がきかないですけれど、それ以外は動きます」
作り物の左腕に、ごく自然な動きで隊服をかける。とっくに慣れたふうな所作で、一見するだけでは義手であると気付きにくい。
物珍しく眺める男と宿舎の通路を歩きながら、これから自室となる場所へ連れられていた。
宿舎は司令部と同じ四階建て。
両側に部屋が並ぶ通路には、ところどころ " 風抜き " となる吹き抜けが設けられている。
キサラジャの建物は砂の侵入を避けるためにほとんど窓がない。しかしそれだけだと蒸し風呂のように熱が籠もるため、こうして下から上へ風が抜ける場所を作るのだ。
こうすると熱い空気は自然に上昇する。そして、上に溜まった熱を横風で強制的に追い出すことで、さらに下層の空気が引き上げられ、窓がないにも関わらず屋内には常に微風が流れるという仕組みだ。
砂竜の国ならではの知恵である。
最上階まで続く穴を見上げて立ち止まったシアンの髪が、パサリと風に翻る(ヒルガエル)。
「どうかしたのか?」
「いえ……今日も此処は騒がしいな、と」
建物の中を下から上へ抜ける風の音が、低く長く空気を震わす。まさに竜の咆哮(ホウコウ)に似たその音を聞きながら、シアンは目を閉じた。
「…?よくわからん奴だな…」
男にはそれが聞こえないらしい。
「いちいち止まらず歩け!ほら、ここが今日からお前の寝室だ」
「ここが?」
ここは宿舎であるから当然、兵士が寝泊まりする個室が並んでいる。
だがどうだろう。シアンが通されたその部屋は明らかに違う。
「僕のような新米にさえ部屋が用意されるとはさすが近衛隊。…しかし何故でしょう。寝室と呼ぶにはいささか広すぎませんか?」
「そう遠慮するな、住み心地は保証する」
「そうですか…」
気乗りしないシアンの背を、強引に男が押し込んだ。
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