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復讐者の記録──壱
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酷く寒い夜だった。あの日──
手網を失い夜通し走る駱駝(ラクダ)の背で、かろうじて意識を保つ少年は寒さに震えていた。
季節は初冬。砂嵐が迫る砂漠の中を、あてもなく走る。
気温がそれほど下がらないこの地でも、乾燥した空気が殴るように吹き付ければ人の肌など簡単に凍らせてしまうのだ。
切り落とされた指の痛みが──徐々に遠のいていく。
彼を駱駝に固定している大きな皮の羽織から、左手だけがダラりとはみ出していたらしい。
痛覚さえも奪われた左手が、跳ねる駱駝の動きに合わせて人形のようにガクガクと揺れていた。
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