アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
目覚めた部屋
-
「ここは貴方の自邸ですか?」
「そうだ、俺がお前たちを宿舎からここへ運んだ。…あのまま放置はできんだろう。荷物もここに運ばせておいた」
「つまり貴方が僕たちを助けてくださったと」
「偶然だがな」
「それは…なんと礼を申し上げればいいものか。この御恩にむくいるべく、僕は貴方の下僕となります…──バヤジット・バシュ……」
下着姿のシアンはそう言ってベッドから降りると、バヤジットの足元に跪いた。
その足に口付けをしようと頭を垂れる──すると、男は急いで足を引いた。
「…っ…やめろ!お前が俺にかしづく必要はない!」
「?」
「そうやって相手に媚びを売るのはやめるんだ。不愉快だ」
「……はぁ」
まるでシアンから逃げるように椅子から立ち上がると、彼の横をすり抜けて壁際に行ってしまった。
シアンのような美しい青年に跪かれて、気分を害する者は珍しい。
まさか照れている訳でも無さそうだが
「第一に、そのような格好で寝台から出てくるな…っ。代えの服は用意してある、まずこれを着ろ!」
……いや、照れているのか、あれは。
「………………」
「…っ、どうした」
「…騎兵師団の将官殿は、純情な方と見受けられる」
「馬鹿にするな」
「僕のカラダに興味はありませんか?」
「…っ…そういうコトはそういう店で いたす。部下であるお前をどうこうせずとも間に合っている」
「…ではそういう場所で " いたした " ご経験はあるのですね。それを聞いて安心しました」
「お前ッッ…」
若くして将官になったとはいえ、歳はもう三十を超える筈──。反応があまりにアレなのでまさか免疫が無いのかと心配したが、本人いわくそうではないようだ。
ただ噂によれば、いまだに妻をめとっていないらしい。
「お前はッ──…ハァ、…奴等が暴走するのも納得だな」
「…ええそうですね。僕は賤人でありながら生意気なふしがあるので、不満を持った方々に襲われたのも順当でしょう」
「そうは言っていない。あのような淫行…っ、陛下をお守りする近衛兵としてあってはならん事だ」
「…………。(他の兵士に嫌われているのはこの清廉な性格のせいだな)」
「……どういう意味だその顔は」
「いえ、ただ…──。……いえ、とくに深い意味はありません」
相手にその気が無いと知ると、シアンはさっさと渡された衣服を身に付け始めた。
“ こいつはもう大丈夫そうだな… ”
そうして片手で器用に長丈衣(エンターリ)をまとうシアンを無言で見守っていると、部屋の外から部下が呼び掛けた。
「バヤジット・バシュ。宜しいですか」
「ああ、いま行く」
部下に呼ばれたバヤジットは、シアンを部屋に残して外へ出た。
....パタン
「──…」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
49 / 107