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神に捨てられた子
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──
「──シアン!何処だ!戻るぞ!」
それから脇目もふらず訓練場に戻ってきたバヤジットは、あわあわと逃げ出す民兵たちを無視してシアンの名を呼んだ。
「戻るぞシアン!シアン!」
「……、僕はここです」
すると、ウッダ村の悲惨な現状に気がめいりそうなバヤジットへ、落ち着いた声が返された。
「苦しそうですね……バシュ」
「そこにいたのか…」
「ナニか、醜いものでも見ましたか?」
「…っ」
「フ……冗談です。戻りましょうか」
バヤジットが見付けた時、シアンは家屋の壁に背を付けて土の上に直に座っていた。
何故そんな場所に座っているのか少し疑問に思う。
バヤジットが歩み寄ると、彼は僅かによろけながら腰をあげた。
「…?お前こそ具合が悪いのか?日の暑さにのぼせたか?」
「いえ…ハァ、それより、面白い情報を手に入れました」
此方へ向けた顔はほんのりと上気している。やはり様子がおかしい……。
バヤジットは覗き込むように腰を屈める。
すると……そんな相手に倒れるようにして、フラリと立ち眩んだシアンが彼の肩にすがった。
「…っ」
掴まえた耳元で、興奮冷めやらぬ声が囁く。
「タラン侍従長は……戦を起こす気などありません。民兵を集める際に平民達にそう明言したようです」
「……!」
「しかも……ウッダ村とさらにまた別の場所、ふたつの地に平民を集めたのだとか。別の場所とは王都ジゼル──その中枢の、クオーレ地区。数十人の平民がそこへ密かに招集されています」
「クオーレ地区に平民が、か?そんな話は部下からの報告に無かったが…」
「ええおそらく…、" そちら " は侍従長が本気で隠しているからでしょうね。ウッダ村(コチラガワ)とは違って」
「つまりウッダ村も俺達の目を欺くための囮だと…」
「そうなります」
そこまで言ったシアンは唐突に
膝から力を失うと、バヤジットの足元に崩れた。
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