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冷たい鉄枷
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「止まれシアン!これは命令だ!」
「……っ」
居住区の複雑な隘路を抜け、クオーレ地区への城門に着いた所で、ついにシビレを切らしたバヤジットがシアンに命じた。
それまで早足に進んでいたシアンだが、仕方なく足だけを止める。
「命令であれば、止まりますが」
「…何か俺に話す事は無いのか?」
「ありません」
頑なに態度を変えない。此方を見ようとしないシアンに、バヤジットが歩み寄る。
「俺はお前に聞くべき事がいくつかあるぞ…」
「そうでしょうね」
「自覚しているならお前から話せ。…何故話そうとしない?」
「……。話すコトができないからですよ」
「……!」
グッと切歯するバヤジット。
バヤジットは近衛隊の将官という立場である。そんな彼にとって先ほど意図せず遭遇してしまった密会は──とても、危険なのだ。
シアンが隠そうとするならば
それを聞き出す義務がある。
「俺に何を隠している?」
「……」
「素直に話す気が無いのであればっ……仕方無い」
ガッ‥!!
「付いて来い」
彼はシアンの腕を持って城門をくぐる。
シアンはされるがまま。抵抗を諦めてバヤジットに連られて歩いた。
行き先はバヤジットの自邸ではないようで、クオーレ地区に入った後も中心部に向けてまたひとつ城壁をくぐる。
そして二人は近衛隊の練兵所の隣り、司令部に辿り着いた。
司令部の戸を荒々しく開けたバヤジット。
近衛隊の権威を象徴するこの建物は王宮にも並ぶ巨大な建築物だ。けれど実際はいっている機能としては、各師団の将官と副官に与えられた執務室や会合室など、あまり多くはない。
その中でバヤジットがシアンを引きずって来たのは、この建物の下層にひっそりと増設された──
冷たい石壁の牢獄だった。
ここは犯罪者を収監する場所ではなく、規律を破った兵士を閉じ込めるための懲罰部屋である。
最も手前の格子戸を開け…牢の中にシアンを押し込んだ。
「手荒になるがやむを得ない」
自らも中に入ったバヤジットが、シアンの身体を壁際に追い詰める。
後ずさったシアンの背が石壁にピタリと当たると同時──至近距離から見下ろすバヤジットが、彼の顎を持って上を向かせた。
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