アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
牢に鳴る媚声
-
「…ッ…シアン、お前…!!」
こんなのは尋問でも何でもない。
止めさせるべきだ。今すぐこの男をシアンから引き剥がしたい。
スレマンがシアンに侮辱の言葉を投げるたび、憤慨していたのは他でもないバヤジットのほうだった。
今だって…奴に殴りかかりたい衝動を必死に堪えている。
“ お前はどうして笑っていられる……!? ”
なのに、シアンは今も笑っている。
その目が嘲笑う相手はバヤジットなのか、彼を責め立てるスレマンなのか。
淫らに喘ぐ姿に取り憑かれているのはスレマンなのか、それとも
バヤジットも、同類なのか……。
「…………やめろ」
バヤジットはたまらず腰の刀を強く握った。そうしていなければ正気を保っていられない。
怒りとともに欲情が沸き立つ。
許されない感情だとわかっていても、喘ぎ鳴くシアンの声がバヤジットの本能に爪を立てて、強引に引きずり出すのだ。
「ハァっ……ハァっ……!くそっ……!」
認めまいと抗えば、睨むような視線をシアンに返してしまう。
「シアン…やめるんだ…!!」
「‥ッ//──ぁぁ、……バシュ‥!!」
「く…ッ」
いっそこの場から逃げ出したかった。
シアンのこの姿を見ていたくなかったし、この声を聞きたくもない。
けれどここで逃げ出せば取り返しのつかない事になる──バヤジットはそれを感じて動けなかった。
「──…っ、もうやめてくれ!!」
シアンから目をそらしたバヤジットは、かぶりを振って喉奥から叫んだ。
「‥ッ…‥‥ハァ、ハァ、ハァ、ハァ‥」
「もう止めてくれ…!!」
重たく湿る空気をなぎ払うような、バヤジットの叫び声。
「…っ…いったいなんだ喧(ヤカマ)しい!」
遊戯の途中で水をさされたスレマンが、何事かと怒鳴り返した。
「バヤジット!貴様さっさと出て行けと言っておろうが!」
「いや!俺はさがらない…っ」
バヤジットは引き下がらず、少し迷った素振りを見せたものの大股でシアンに近付いた。
ガチャ!
彼はシアンの手枷から片方の留め具を引き抜いた。
「この者の疑惑はっ…もう解けました。連れて帰ります」
「バヤジット…!私の戯れを邪魔をするとは何事だ?いつ貴様にそれを許した?」
「そんなもの知りません。俺は俺の信念に従い行動するだけ…」
「ちっ…」
「こんな尋問は間違っている!話す事は以上です」
「言わせておけばっ…、成り上がりの男爵ごときが!」
他方の手枷も同じように外す間、怒ったスレマンがバヤジットに怒鳴り続けていた。
バヤジットは普段、この将官に逆らったりしない。
だが今だけはスレマンに真っ向から歯向かい、シアンの拘束を解いて彼を解放した。
シアンをスレマンから奪い返すように抱き寄せる。
脱がされた服がシアンの足に絡まって転げそうになると、バヤジットがその身体を斜め下から肩にかついだ。
下半身が丸出しのシアンだが、バヤジットはかついだ彼ごと防寒用の衣を頭からかぶり、服の内側に彼を隠す。
スレマンがまだ何かを喚いているが
バヤジットはそれを無視して、牢が並ぶ部屋を後にした。
───
司令部の外に出ると、嵐の闇が二人を待ち受ける。
「………離してください」
バヤジットが自邸へ戻っている道中で、彼にかつがれたシアンが衣の内側で呻いた。
まだ体力が回復していないシアンの声は、弱々しい。
「聞こえませんか?離して ください…!!」
「…っ、大人しくしていろ」
そんなシアンが肩の上で身をよじっても、バヤジットの逞しい腕は離す気配がない。
彼はそのままシアンを連れて自邸へ戻ったのだった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
87 / 107