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引き留める者
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「君は本当に優しいね」
「……ッ」
「ありがとう」
それと、ごめんね
「これからはバヤジット将官が君を守る。あの方は君を貶めたりしないから安心していい。そしていつかここを出て──…君の夢を叶えてくれ」
白い花
それが君の宝物
いつか、一面に広がる白い花を…
この干からびた国に、君の夢を咲かせてくれ
シアンは託すような言葉をかけて、優しい言葉だけを残して、オメルをおいていく。
部屋から盗んだ大きめな夜着を身にまとう彼は、他の使用人に見つからないよう注意をはらいながら、邸宅の出口に向かった。
「オレは、まだ…!」
オメルの泣き声が背中を追った。
「まだ敬語の使いかた教えてもらってない!約束したのに!手紙だってっ…まだひとりじゃ書けねぇ…!!」
「……」
「知らない、まだ、教えてくれてないこといっぱいあるのに!まだ、まだ、まだ、まだ…ッッ」
だが外へ続く扉を開ける頃には、その声も聞こえなくなる。
「まだオレ──…シアンのこと……
…ッ…何も知らないままじゃんか……」
一度も振り返らず、オメルが何を言おうと取り合わない。
こうやって彼を突き放す事が、シアンにも許された、思いやり故の決別だから。
「……知る必要は無い」
だからどうか、僕のことは忘れてくれ
──…
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