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4話 夏休み
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暑い炎天下の下、砂浜で忙しなくカニが動き回っている。
定期的な波の音がざぷんざぷん鳴り響き、たくさんの人がバカンスを過ごしている。
僕達もその中の1人だ。
学校は夏休みを迎え、涼と一緒に海にやって来た。
見渡す限り綺麗な青色で、パラソルに包まれのびのびと過ごせそうだ。
第1に涼に上手くいったことを報告する為に。
そして単純にせっかくの夏休みを満喫する為だ。
泳げないんだけどね。
「やっぱり人多いね、でも皆楽しそう。」
「雪也は楽しんでる?」
「もちろん!」
手に持っているバニラアイスを口に含み、シャリシャリとした優しい食感を舌で味わう。
アイスが残り1つとなったところで、そばにあるメロンジュースに入れて、自家製クリームメロンソーダを作った。
うん、すごく美味しい!
「そういえば。雪也、おめでとう。」
「?」
何か大切なことを思い出したかのように、涼が目を見開く。
涼の碧い目と海の色の美しさが重なって、キラキラと輝いて見えた。
「傑のことだよ。本人から聞いた。」
「えぇ!?」
もう傑から話をしてくれていたのか。
仕事が早すぎて僕は驚きを隠せなかった。
そして、素直に祝福してくれている涼に感謝を伝える。
「本当にありがとう。涼のおかげで上手くいったから!恋のキューピッドだね。」
心からの笑みを涼に向けると、照れくさそうにしながらぽつりと彼は呟いた。
「恋のキューピッド、か。」
「どうしたの?」
生憎人々の声が大きくて、涼の言葉を聞き取れずに聞き返したが、なんでもないよと上手くかわされた。
「そうだ、俺もクリームソーダ作りたいから、ジュース買ってくる!待ってて。」
涼は早足に逃げるかのように飛び出して行った。
背中が遠くなるまで見届けていたが、どこに紛れてもあの1本1本が見える綺麗な金色の髪が羨ましい。
ぼーっと群衆を目で追ってクリームメロンソーダを飲んでいると、どこからともなく上から声が聞こえてきた。
「ねえ君、1人?」
ここまで来てナンパする人もいるんだなとしみじみ1人で思い耽っていると、ひょいとガタイのいいお兄さん2人組が、僕の目の前に現れた。
「あの、?」
「君だよ君、クリームちゃん!」
クリームちゃん?
僕の髪色が淡いクリーム色だからか、よくわからない呼び方をされる。
屈託のない笑みで白い歯を見せた2人組は、中々立ち去ろうとしない。
え?これもしかして僕がナンパされているの?
「えっと、」
「1人なら俺達と遊ぼうよ。」
何か企んでいるような、悪い顔が見に見える。
絶対ついて行ったら駄目な気がすると本能が叫び、上手く断る理由を探した。
けれどそう都合良く出てくるわけでもなく、1人の腕が伸びてきた。
ーーこわい、どうしよう?
ぎゅっと目を瞑り終わりを悟った時、怒っているような声が聞こえた。
「あの、俺の恋人に勝手に手を出すの辞めてもらえます?」
ぱっと上を向くと、般若のような怖い顔をした涼がジュースを持って立っていた。
今にも手に持っているジュースを男の人達にぶっかけてしまいそうな勢いだ。
「うわあっすみません!ほら行くぞ!」
慌てて走っていく彼らを横目に、涼はどすんとビーチベッドに腰を掛ける。
怖かったので、すごく助かった。
「ありがとう、涼に助けられてばかりだね。」
「ううん、ああいう奴らってガチホモが多いから危なかった。」
ガチホモ…?ガチホコ…?
聞いたことのない単語が出てきてよくわからなかったが、危なかったことには間違いない。
「ごめんな、恋人って言ってしまって。」
隣にいる涼の横顔を盗み見る。
遠くの風景を眺めながら、悲しそうな目をしていた。
なんだかすごく申し訳なくて直視できない。
「ううん、涼とはずっと友達でいたい。僕にとっては大切だから。」
きっとこの言葉で傷つけているんだろうな、とチクッと心が傷んだ。
悲しそうな表情の中、ちょっぴり嬉しそうに微笑んだ涼。
僕達は少しの間、波の音を聞きながらお互い言葉を交わすことは無かった。
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