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◆04
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初めてのキス以来、二人は放課後になるとあの場所へと向かった。
もちろん別々に。
先に来ているのは大体シュウヘイで、手の届く位置まで駆け寄って来るのを見届ける間も無く首に手を回し唇を求めた。
子供みたいな秘密のキス。
軽く唇を合わせ額を合わせ視線を合わせ、一度笑うと、言葉も交わさずに元の世界へと戻っていく。
それ以上の欲求がない訳ではなかった。
唇を合わせれば、舌を絡めてみたくなったし、それ以上深く関わりたいとも思っていた。
しかし、そうしてしまうと、日常生活にまで抑えが利かなくなる気がして、必死に抑え込んでいた。
シュウヘイは多分、スルガも同じ気持ちなのだろうと思い込もうとしていたが、あの場所を一歩離れれば、全く何事もなかったかの様に過ごせる彼を見ていると不安で仕方なかった。
やはりからかっているだけなのか―と、何度も彼を問いただしてみたくなったが、唇を重ねるだけで、その気持ちがリセットされるのだから、単純なものだ。
それに、今まで本心を抑圧して来たシュウヘイにとって我慢はお手の物だった。
結局、高校卒業まで、二人は傍目には単なるクラスメイトでしかなく、大学も学部が違えばもう知り合いでもないだろうくらいの関係に見えていた筈だ。
シュウヘイ自身も、もしかするとそうなるのかも知れないと感じていた。
だが、それでもいいとどこか諦めていた。
高校を卒業すると特別な理由が無い限り、エスカレーター式に大学へと進学する。
寮に残る事も可能だが、交際費がかからない分、コツコツと貯めた仕送りと、アルバイト代でシュウヘイは一人暮らしを始めた。
親にそのことを伝えると、簡単に認めてくれたので、周囲と上手くいっていないことには薄々気付いていたのかも知れない。
スルガも一人暮らしを始めていた。
話す機会もなかったので、一緒に住もうなんて話は端からない。
あの場所へ行くことも難しくなったのだ。
第一、連絡先の交換すらしていない。
現に学部が違えば、大学が始まってから、ひと月顔を見ることさえなかった。
本当にひと時の夢であったのだろうと、シュウヘイはあっさりと納得していた。
だが、やはり意外なのはスルガの方だった。
大学構内で、次の講義へ向かう道すがらシュウヘイは急に手首を掴まれた。
あの時と同じ状況。
違うのは場所だけ。
引き摺り込まれたのは、資料室のような物置の様な四畳半あるかもわからない狭い部屋だった。
引っ張った相手はもちろんスルガ。
あの時と同様にシュウヘイが声も出せずに居ると、突然にその体をキツく抱きしめ今まで数百回しただろうキスが薄れるくらいの熱くて深い口づけをして来た。
やっと唇を解放された後、恍惚の表情でシュウヘイがスルガを見上げると、彼はまたあの切ない顔で
「名前、呼んで…」
と言ってきた。
その日から、シュウヘイは彼を名前で呼んでいる。
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