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◆05
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「なんで……」
俺なの?
何度、その言葉を飲み込んだことか…
スルガと言えば、その地域では知らない人は居なかった。
正しくは、スルガの家が経営しているディスカウントショップだ。
日に一度はこの辺りに住む人間の半分が世話になっていると言っても過言で無いほど、その店が点在している。
そんな処のお坊っちゃんとくれば、どれほどいけすかない野郎なのだと誰もが思うだろう。
昔から金持ちは僻みも込めて、いけすかないと相場が決まっていた。
だが、彼は違った。
金が有ることを鼻にかけたりはせず、むしろ謙虚に振る舞い、勉強もスポーツにも真面目に取り組む、高校三年生の時分には生徒会長も務めた。
かと思えば、それほどお堅いわけでもなく、考え方は柔軟でノリも良い。
周りに人が集まって当然の人物だった。
きっと、彼の家は何代も前からその様な教育を家族にしていたからこそ、家業を大きくして行けたのだろう事が予想できる。
家柄も申し分ない上に容姿端麗とくれば、女性でなくても、ときめいて当然なのかも知れない。
実際、男女問わずアプローチをかけられて居たようだが、彼を射止めた者はいなかった。
単に好みの問題かとも思われたが、前述通りとにかくモテる。
誰もが振り向く美男美女、体育会系の爽やか男女、平凡、可愛い系、ややマニアックそうな者たちまで……
全ての好みを網羅したであろう挑戦者達の結果は全て撃沈。
付き合うに至った者は誰もいない様だ。
当然、許嫁がいるだとか、20歳までは特定の人とは付き合わず遊んでいるだとかの噂が立ち、終いには唯一愛した人は既に他界しているとか、実は性別逆転の呪いをかけられているなんて物語じみた噂すら囁かれていたらしい。
常に話題の中心になるような彼をシュウヘイはあの時まで全く別次元の人間だと思っていた。
いや——今でも、たまに思う。
自分と同様に人に言えない性癖を持っていたって、決して同じではないのだ。
初めて唇を合わせたあの日は、ただの親近感に納得しかけたが、冷静になってみれば益々わからない。
なんの取り柄もないどころか異常な自分と、それが単に唯一の欠点であるだけの彼が触れ合う事すら奇跡だ。
だからこそ、大学入学を機に、距離が出来た事にむしろホッとしていたかも知れない。
それなのに、彼は追ってきた。
縋るような顔で、傍に居て欲しいと自分に言うのだ。
「ヤスヒコ…」
初めて名前を呼んだ時、シュウヘイは確信した。
自分が彼を好きになってしまった事に。
今まで一番好きになってはいけないと思っていた相手を愛してしまっている事に。
たとえこれが、彼の一瞬の気の迷いだとしても、単なる戯れだとしても、傍に居ようと思った。
出来れば、最後は壊されるか捨てられるかのどちらかであればいいとそう思ってしまった。
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