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◆09
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ヤスヒコの提案は実に奇妙なものだった。
―シュウを俺に飼わせて。
人によっては―いや通常の感覚の持ち主ならば、眉を顰めて当然の提案だろう。
言われた時は、シュウヘイすら泣くのも忘れ、ぽかんと口を開いてしまった。
「責任持って、最後まで飼うから。」
真剣な顔でそんなことを口にするなど、最早狂気の沙汰だ。
だが、恐らくシュウヘイにだけしか見せたことがないだろう、あの切なげな表情を浮かれられては、断れる訳がない。
そもそも、シュウヘイに拒否権などないのだ。
どんな形でも傍にいたいと思ったのはシュウヘイだし、むしろ、劣等感からそれすら実行することが出来ないシュウヘイには最高の提案と言えた。
「ヤスの物になれるなら、なんでもするよ」
「嫌になったら、いつでも逃げ出していいから」
「嫌になったら、いつでも捨てていいから」
鼻を擦り合わせて笑い合い、二人は長い長いキスをした。
大学で過ごす時間は相変わらずで、言葉を交わす事はおろか、顔を合わせる事すらない。
もちろん、大学構内であった一悶着については色々と憶測が飛び交ったが、当人同士に問い合わせてみても、手違いがあっただけだと曖昧に笑わらうだけで、それ以上は語らない。
その態度が更なる盛り上がりを見せたが、それも何か別の事件が起こった事で一月と経たずに風化して行った。
ただ一点変わったことと言えば『飼う』と宣言された直後から、シュウヘイはヤスヒコのマンションへと帰るようになった。
部屋を引き払わなかったのは、ヤスヒコとの関係を親に説明するのが面倒だっただけだ。
誰にだって、二人の関係を詳細に説明するつもりはなかったし、友だちであることを説明することさえ面倒なのだ。
いや―正確には面倒ではない。
二人ともそう自分を納得させているが、実際は、誰にも教えたくない位にこの関係を大切にしたかったのだろう。
飼われる事で収入の心配がなくなったシュウヘイはアルバイトをやめ、ヤスヒコは加入して間もないサークルにもろくに顔を出さなくなった。
少しでも多くの時間を二人は肩を寄せ合って過ごす。
丸一日部屋から出ないことも少なくはなかった。
会話は殆どない。
目が合えば、唇を重ねれば良かった。
お互いの温度を感じる事が出来れば、それだけで幸せだったのだ。
だからと言って、ずっと裸で過ごしていた訳ではない。
実際に二人が繋がったのは、この共同生活が半年以上続いた後だった。
シュウヘイにとってその期間は、不安でもあり不満でもあった。
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