アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
◆11
-
ヤスヒコは自分の事をあまり話さなかった。
本人曰く、上手く言葉にしきれないかららしい。
それはシュウヘイも同じで、初めて他人に対し腹を立てたその日は、訳もわからず泣いてしまった。
そうなることで、やっと素直な気持ちを口に出来るらしく、ヤスヒコに好きだと告げた時の様に、まとまらないながらもポツポツと自分の不安を話し始めた。
ヤスヒコはやはり黙ってそれを聞いてくれた。
「ペットならペットとして、もっと酷く扱ってくれていい」
その時は、ヤスヒコも
「ペットだなんて思っていない。ただ、責任を持って最後まで面倒を見るって言う意味の飼うだ」
と、言っていたが、もしかすると、シュウヘイのこの一言がいけなかったのかも知れない。
その後も特に変わった事はなかった。
唯一変化があったとすれば、お互いに身体を求めあっていることを確認しあったため、当然、そうなる様に事は進んだが、決してスムーズにとはいかなかった。
シュウヘイはもちろんだが、驚くべきことにヤスヒコにも性交渉の経験はなく、しかも同性同士となれば、インターネットから集めた知識だけでは中々上手くいかない。
散々な思いをしながらも、なんとかつながり合う事が出来たのは、一ヶ月程、試行錯誤を繰り返した後だった。
当時使用していたセミダブルのベッドは、惨状と化し、とても綺麗な思い出とは言えなかったけれど、二人とも言い知れぬ幸福感に包まれていた。
因みにシュウヘイの予想通り、下が彼であり現在に至るまでそれが逆転したことは一度もないし、したいとも思っていない。
結合を果たすことが出来た後は、お互い若さもあって、発情期の猫の様に交わりあったものの、内容としては至ってノーマルであった。
関係が落ち着き、回数が減った後も特に代わり映えはない。
お互いそれで満足している様に見えたし、日常のほんの些細な事からでも繋がりを感じられる事も知ったのだ。
平穏な日々は二人が大学を卒業するまで続いた。
大学卒業後、二人は話し合ってお互いの両親にカミングアウトをすることにした。
だが、打ち明けるのは飽くまで自分は同性愛者であると言うことだけで、二人の関係については、たとえ親であろうと秘密にしたままだった。
受け入れられるどころか、お互い信じてすらもらえなかったが、そんなことはどうだっていいのだ。
特にヤスヒコなどは、長男でないにしろ、体裁を考えてある程度の年齢になれば結婚をしろと迫られるだろう。
その時の言い訳として、告げておきたかっただけだと彼は言った。
しかし、そんなことをさせたのが自分なのだと思うと、シュウヘイの気は重かった。
ヤスヒコの"飼う"の言葉がどこまで本気かは、未だにわからない。
本気なら本気として、自らも受け止める必要があるのだろうけど、いくら真剣に説明されても先の事などわからないと、捻た考えがどうしても来てしまう。
そんなシュウヘイのマイナス思考がヤスヒコをどんどんおかしくして行ったのかも知れない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
22 / 41