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「み、ない、でっ……服、お願いだから……っ」
「これ、ぜんぶ……お前の親がやったの」
「っ! ち、がう…………これは、ほんとうに、コケて」
「陽!」
「ッ」
祐希が怖い顔をした。
怒ってる。すごく。
「な、に……」
「本当のことを言え。これは親にされたのか?」
「っ…………うん。おれが、ちゃんと、できないから」
「……」
「幻滅、しないで……っ、祐希、きらいに、ならないでっ」
祐希に嫌われたら、おれの居場所はもうない。
学校に行くのもこわくなる。
____また、ひとりぼっち。
「へえ……そういうこと、かよ」
「……っ、いやだ、捨て……ないで。ひとりぼっちに……しな、いで」
こんなおれ、やさしい祐希でも嫌だと思う。
父さんにもう捨てると言われたとき、おれはすがりついた。
「ちゃんとするから捨てないで」って。
そうしたら父さんは気持ちが悪いと言ってきた。
おれはきっと気持ち悪い。
「陽……ごめん」
「ッ」
嫌われた。
同じだ。
父さんのときと。
結果はわかっていたのに、同じことをおれは。
呼吸が苦しくなって逃げだそうとした時だった。
おれは祐希に引き寄せられ、さっきよりも力強く抱きしめられていた。
「…………へ……」
「すげえ痛かったよな……よくがんばったな」
「ゆ、き……」
祐希が泣いている。
どうして……
幻滅されたと思っていたのに。
まるで自分が痛いみたいに、割れものを触るみたいに、祐希の手はおれの背中をやさしくなでる。
「ごめん……っ、俺がもっとはやく知ってたら、絶対……」
「な、んで、祐希が……泣く、の。幻滅しないの、気持ち悪いって」
「するわけねえだろっ、俺をどっかのクソ野郎と一緒にすんな」
「ご、めん」
よくがんばった。
そう言われたとき、また泣きそうになった。
おれはがんばったんだ。
この"痛い"は当たり前じゃないんだ。
「お前の親……まじで殺したい」
「そ、それはダメっ」
「やらねえよ。けどのうのうと生きてんのは許せねえ……陽がなにしたんだよっ」
「…………2人とも、捕まってる、から。おれが26歳くらいになるまで、出てこないって。お父さんが言ってた」
「……そうなのか」
祐希はすごく悔しそうだった。
おれも、心の底から2人が好きとは言えない。
きっと親不孝なんだと思う。
ごめんなさいと思いながら、ずっと逃げたかった。
離れたかった。
「貴弘さんは、陽のために色々やってるんだな」
「うん……おれはもう高校生だから、ぜんぶ話してくれた。幸せになっていいんだよって」
「……当たり前だ。陽は誰よりも幸せになれ」
「へへ……いまは、お家帰ったらすぐ布団入れるから、幸せ」
「っ……痛くないか? もう」
「うん。2年生のときからいまの父さんと一緒だから、もう痛くないよ」
祐希はクールだけど、表情がよく変わる。
いまは泣きそうな顔をしてる。
おれより悔しがってくれてるし、おれより怒ってくれてる。
「消えねえのかな、このアザ」
「……わかんない。でもこれ、子どものときにできた傷、まだちょっと残ってる」
わき腹にできた縫ったような傷痕が薄ら残っている。
しばらくすればアザも落ちつくらしいけど、きれいに消えるなんてずっと先の話。
「温泉とか、いけないから……やだ」
「俺の友人に親が医者のやついるから聞いてみる」
「うん……ありがと。こんな汚い体……祐希に、見られたくなかった」
「誰よりもきれいだよ、陽は!」
「え?」
「ああ、いや……いまのは大げさすぎた、けど」
「……」
「忘れてくれ」
「……ぷふ」
「笑うなし……あー、もう」
「ゆーき、顔赤い」
「うるさい。ほら、さっさと飯食って課題すっぞ」
「うんっ」
結局、祐希とこの日もいっしょに過ごした。
不安もいつの間にか消えて、2人でいる時間がほんとうに幸せだ。
この時間が一生続けばいいのにって、何度も思った。
「は? 露天風呂あんじゃん!」
おれの家の裏側には露天風呂があって、それを初めて知った祐希はかなり驚いていた。
「温泉行けなくてもここで十分じゃね?」
「友だちといっしょに、入りたかった」
「あー、そういうこと。一緒に入るか?」
「え……いい、の?」
「貴弘さんがいいなら」
「うん、いくらでもお泊まりしてもいいって」
「超いい人だな」
決まり、と笑った祐希の無邪気な顔にドキッとした。
こんな顔もするんだ……
「陽、親になに言われたかわからないけど、俺は陽の体を見ても幻滅なんてぜってぇしないから」
「……うん」
「悪いことしたなら怒るけどなんも悪くねえし。それに相当なことなければ陽を嫌いにはならないし、まじで怖がらなくていい」
「うん」
「結構笑うよな」
「へ」
「……笑った顔、かわいい」
「! も、もう笑わない」
「なんでだよ」
かわいいとか、言わないで。
祐希に言われたら、ドキドキしてしまうから。
「ゆ、祐希の笑った顔も……かわ、いい」
「かわいくねーし」
あ、ちょっと口をとがらせた。
かわいい。
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