アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
やっぱ邦画もすきなんだよなあ、
-
安息の生活の中に突如差した影に、血脈が早まった。見られている。心広は誰かに、見つけられてしまった。
映画の冒頭はこのようなものだった。日本の邦画らしい、どこか毒々しいタッチと、ノーメイクの役者。一眼レフで撮ったような克明な描写と、演者のリアルな芝居。
後半まで映画を見つめていた。要するに、心広にミニカーを手渡したのは、心広の父親が虐めて崖から突き落とした同級生の父親のわけだが。いかにもよくある、山本周五郎賞の原作映画になった。父性を描いた作品はそう多くない。母性を描く作品は海外日本問わずに多いが。
ふと、周りの客の様子が気になった。シーシャバーの客層は極めてよろしくない。キャッチだかキャバクラのボーイだかなんだかの夜職集団に、いかにも枕営業のホスト。そうして、若者の街渋谷に似合わぬぐったりとしたおじさんの群れ。この後ホテルに行ってデリヘルでも呼ぶのだろうか。
あとは、隣の席で映画も気にせずイチャコラしている今どきカップル。どうしようもない、酒に浸かった世界の縮図だ。善良な人間はここには少ない。
俺は心の中で乾いた笑いを立てながら、映画のクライマックスを氷が溶けて薄まったほぼ味付きの水を飲み込みながら思った。
この映画は誰のために作られたのだろう。この映画を作った人間の心の奥底をこじ開けて見てみたい。解剖のように。作者の人間性を確かめたくて。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
23 / 34