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あーあ
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「怪物め」
口から棘が飛び出たのだと錯覚だとわかっていても、痛くて。途方もなく、ひとりぽっちにされた気がして。思い切り突っぱねられたような心地で、意識がくらくらした。
だってね。「怪物め」なんて言ったときの男の表情が。声が、目が言うんだ。「あなたは善人にはなれない」と。頼もしいくらいの実感をともなって襲ってきたんだ。
だから俺はその場で嘔吐した。うっわ。やば。薄い茶色の液状がびたびたと彼の黒いズボンを濡らす。ああ、ぐるじい。やば。殺される。死ぬわ。最後に綾に会いたい。綾と一緒にテーマパーク行って、死ぬほど絶叫しながら走りたい。馬鹿やって、出禁になりたい。そうしたらまた、他のテーマパークに行って同じことをしよう。きっと、楽しいよ。
男もさすがに驚いたのか身体が硬直している様子だった。センターパートの隙間から見えるおでこに険しい眉間が寄っている。見なくてもわかる伝わる怒ってる。俺をさぞ不愉快に思っているだろう。初対面の、よく知らないガキの嘔吐を受け止めたズボンは、びったびた。見るからに高そうなんだが、身体売らんと払えんくらいの値段なんちゃうん?
「ばっかみてえ」
がばっと上半身を反らせて、言葉を吐く。え、え。なにこの口調。さっきまで話してた人の声? 先程とはうってかわった低音にあせる。怖。二重人格かってくらい不気味だ。
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