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馬鹿で悪いすか
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「おまえって馬鹿だろ」
ジトーっとした濡れた瞳で見られ、なんだか恥ずかしく思えてきた。こんなに有名な方々を知らないなんて。ほんとに2023年生きてるの俺?
「本業アイドル。サブで芸能事務所の幹部」
ああ、きらっきらだこの人。眩しくてかなわん。無理だわん。勝てないわん。
「だからよろしくね。オーディション蹴るとかありえねえからな。来週の土曜日、10時に事務所来て。それと連絡先交換ね。飛んだらわかるよね? 事務所の住所これね。最寄りは目黒」
俺がタジタジスマホを握っていると、むりくり奪われてSNSを強制的に交換された。ひゃ。この人怖い。
「よっしゃ。死んだ目くんげとっ」
「死んだ目」というのは、俺のSNSでの名前だ。いざ呼ばれると死ぬほど恥ずい。ゆでダコになる。ポン酢で食べたらおいしいよ。
「フユン」
「え」
「俺の名前。おまえ俺の名前もわかんねえだろ」
日本人じゃないのかな? 聞きなれない異国の音。
「はい……」
「はは。素直だなー」
そんな失笑とともに、肩掛けのショルダーバッグの中からハンドタオルを持ち寄り、ズボンにかかった俺の吐瀉物を拭き取る。最後には、首にネクタイのように巻いていたハイブランドと思わしきロゴの入ったスカーフで、こまめに拭き取っていた。
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