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本音 -7-
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女にされる。そういう表現は間違っていないのかもしれない。
身体の汚れもそこそこに拭ったあと、黒宮の腕に抱かれながら、櫻井はそんなことをぼんやり考えた。
昨晩もそうだった。果てた後、余韻の残る身体を抱きしめられたときのぬくもり、ずっとその中にいたいと思ってしまう。
抱かれることで、こんな女々しさが芽生えるとは思っていなかった。
黒宮の顔を盗み見ると、また微睡み始めたように見える。その顔を見て櫻井が次に思い出したのは、果てる直前の景色だった。
黒宮の細い身体が、自分の上で雄の動きをしている姿。彼の息遣い。その瞬間に集中していたのは表情だけであったのに、それ以外の詳細も思い出せるものだ。
一瞬のことのはずなのに、快感だけでいっぱいのはずなのに、心がいくつも分裂するかのように勝手なことを思い始めるあの瞬間。
走馬灯のようなものなのだろうか、あるいは脳が一番機能している瞬間なのかもしれない。とにかく、その感覚は覚えこそあったが、久々に感じるものだった。
セックスの最後のあの時間。まさか自分が抱かれる側になって、それを経験するなんて。
少し冷静になってきて、今頃pmpの2人がどうしているかが気になった。まだ電話も入れていないが、この状況は自分の感情を抜きにしても抜け出しにくい。
彼らに無断で仕事をサボったことなんて初めてだ。こういう時、あいつらはどういう対策を取れるのだろう。自分のことはどう思うのだろう。
彼らは自分に絶望しただろうか。自分で描いたその思いで、胸に亀裂が走るような痛みがした。
やっぱりどうにかしてここから逃げたい、そう思い始めたころにコツコツとノック音が響いた。
「おはようございます」
ドアが開く前から分かっている、武上以外に朝からこの部屋に来る人間など想像が着かない。そういえば、彼も香月も、昨晩はあの後いつ帰ったのだろう。
「うん、おはよ」
黒宮の挨拶はしゃんとしていて、彼が起きていたことを櫻井はやっと気づいた。自分の視線は気づかれなかっただろうか。
「これから朝食の準備をいたします、その間にシャワーをどうぞ」
毎日朝食を作ってもらっているのか。
「櫻井くん、先入ってきていいよ。俺もうちょっと寝てるから」
「あ……どうも」
名残惜しいながらも、黒宮の腕から離れて立ち上がった。黒宮はすぐに布団を引っ張って、その中で丸くなり目を閉じた。
その姿を数秒見た後、ハッとして昨日の服が入ったクローゼットに向き直った。
「肌着類は昨夜この家で洗濯しました、脱衣所に干してあります」
「…………」
武上からのその情報に、櫻井はすぐに返事をしたくない気分になった。
「あの、その前にpmpに連絡を取ってもいいでしょうか」
「黒宮さんをお待たせすることになります、シャワーを浴びてからにしてください」
「でも急ぎで一言くらい……」
「だーから、お前は休みだって連絡はしてあるから。さっさと入れ」
「…………はい」
やはり黒宮に言われる方が凄みを感じてしまう。ベッドでぬくぬくと丸まっているだけだというのに。
「では、案内します」
「どうも……」
武上に案内され、櫻井はスゴスゴと浴室へと足を向けた。
自室の脱衣所と風呂場を足してもまだ足りないほどの広さの洗面所。黒タイル張りの床はついラブホテルか何かかと思う。天井から垂れ下がる物干しだけがやたら不釣り合いに家庭的であった。
何だかなぁ、と思いながらそこから自分のパンツやら何やらを外す間に、武上がタオルを準備している。
「ボディーソープ類は自由にお使いください。出たら、直接黒宮さんに伝えてください」
「……はい」
櫻井は度々思う、この男は黒宮と同居しているのではないかと。
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