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崩壊 -3-
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「…………」
覚悟していた衝撃は来なかった。
顔面の前で重ねた両手にさえ、何もぶつかってはいない。
恐る恐る手を下ろすと、自分の目の前で静止していた拳もゆっくり下ろされた。
「反応早いね」
黒宮の声は、やはりフラットだ。髪の毛を放されて、櫻井は重力のままにベッドに落ちた。
「あなたが……」
櫻井は倒れたまま声を出してみた。緊張状態から解けると腹のムカムカが蘇ったが、どうにかこらえられそうだ。
「あなたが俺の反応を見て、面白がってるのを、思い出したんですよ」
「ふぅん……なるほどね」
足先で小突かれて、櫻井は仰向けになった。胸の上に足が乗せられてまたゾワッとしたが、軽く体重をかけられた状態で足は止まった。
「防御が一番のパフォーマンスと思った?」
「……あなたの機嫌取りより、自分の身を優先しました」
「正直でいいことだ」
胸が少し圧迫され、櫻井は口を閉じ喉を締めた。
「俺だって、お前の出方ばかり気にしてるわけじゃないよ。必要があってお前を殴ったんだ」
「なんの必要ですか」
櫻井はぶっきらぼうに返した。
「人を手懐ける手っ取り早い手段って、なんだと思う?」
櫻井はその言葉に、咄嗟に黒宮の表情を注視した。
「俺が思うのは金、セックス、暴力」
「……典型的ですね」
「典型でいいんだよ、人間そこまで複雑じゃない。それと、まだ続きがある」
黒宮の手がヒラリと外側に向き、武上がすぐさまその手に一枚の紙を差し出した。
「っ!」
「おっと」
櫻井はチラリと紙を覗いた瞬間に飛び起きようとしたが、胸をズンと踏みつけられてベッドへと押し戻された。
その紙には、数年前に撮影した自分の証明写真が印刷されていた。間違いなく、今の事務所に入社した時のものだ。
「社長から取ってきたのか……!?」
「安心して、社長とはグルじゃないから。勝手に拝借しただけ」
櫻井がもがいても足を退かすことはできず、逆にどんどん胸に圧力がかかるばかりであった。
「情報」
わざとらしく指先で紙を上から摘まんでヒラヒラとさせながら、黒宮は櫻井を見下ろした。
冷めた視線でも、あくどい笑みでもない、いつもの顔のまま黒宮は続けた。
「人の頭を上がらなくさせるのに重要な要素だ」
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