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敗北 -16-
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「ん……?」
黒宮の発言に、櫻井は首を傾げるのを躊躇わなかった。
「俺の期待通りには動かなくても、予想通りにつまらない動きをする奴はいっぱいいるんだ。ていうか、そういうのがほとんど。でもお前は、本当に俺の予想も期待も、いつもいつも裏切ってくれたよ」
小さく笑い声を洩らす黒宮に、櫻井は自分の方が裏切られていると訴えたい気分だった。昨日と違って、一体この変わりようはなんなのか?
「今日、お前がpmpの2人と一緒にいるところを見たよ」
ゾクッッ、と。妙な生ぬるさのある空気に櫻井は呑まれかけていたが、全身の血がその一言で凍りついた。
「……なん、で……まさか、あいつらにまで、なにか……」
露骨に震えだした櫻井を眺めながら、黒宮の方も露骨に悪意を表した笑みを浮かべてみせた。
……のも束の間、急に顔をクシャッとさせて「ははははは……」と笑い声を上げた。
「ちょっとは驚くかとは思ったけど、そこまでとはね」
そんな顔をされても、締めつけられた心臓が異常なほどに跳ねるのを、櫻井はまだ押さえられない。
「別にお前のああいう顔を、俺に対して向けてほしいわけじゃないって分かった」
黒宮は顔から笑顔を消して、落ち着き払った声色で仕切り直した。
「俺が櫻井くんに求めてるのは、突然ズボン下ろしたり、俺が無茶言っても斜め上の方向で返してくれたりとか、そういうことなんだよ。やさぐれたお前はつまんねぇ」
櫻井は少しずつ呼吸を落ち着かせながら、黒宮の言葉を聞き逃さないでいた。
まだ、この急展開に頭は付いていけてない。
昨日までは2人の間にある程度の駆け引きがあって、それが昨日出された切り札で、一気に自分が貶められたはず。
まるで今は、そんなもの自体が無かったかのような……これはなんだ?
「ここしばらく、本当によく笑ったよ」
黒宮の笑顔を見て、櫻井はこうなるに至ったきっかけの日のことを思い出した。
彼のいう、給湯室でズボンを下ろしたなどという、何度思い返してもバカらしさしか感じないあの時のことではない。
その前、黒宮と一緒に通路を歩いたときに見せた、彼の笑顔を。
一瞬、緊張の糸は緩みかけた。しかし櫻井はすぐに時を現在へと戻し、今自分が置かれている状況を思い返した。
「でも、俺があんたにとって笑えない存在になったのだって、あんたのせいでしょう」
櫻井は、昨日ここにあるテレビ画面に映っていた自分の痴態を思い返した。
「今の俺はあんたに従うことしかできない、もう、あんたを面白がらせることを第一に考えられるようじゃありませんよ」
「あー……あのサイトのこと言ってんの?」
「そうですよ……お願いしますから、あれだけはすぐに対応を……」
「ていうか、あれ嘘だし」
「……は?」
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