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敗北 -17-
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「まぁ嘘っていうか、作っただけっていうの?武上がそれっぽくやってくれたけど、ネットには公開してないってだけ」
「…………はああぁぁ〜〜〜~!?!?」
これほど渾身を込めて、この感嘆詞を叫んだことはない。
それ以上言葉も続かない、ただただ度を越えた怒りと呆れでいっぱいになり、硬直するばかりであった。
口をアングリと開けて固まる櫻井の様子を見て、黒宮はケラケラと笑った。
「まぁこれだけ鮮やかにドッキリが決まったなら、それだけでも作る価値はあったな」
その一言で完全に轟沈し、櫻井は脱力しきってベッドへと倒れた。
「マジでふざけんなよあんた……」
昨日のあの一瞬であれほど粉々になった心は、あれほど流した涙はなんだったのか。
ドッと疲労感がこみ上げてきた。これで幕切れにしても、感情の消費量が大きすぎて手放しに喜べない。
「そうだね、まぁ見たいものは大体見れたし。もうこれもいんないや」
「へ?」
櫻井は完全にベッドにくっついていた頭をヒョコリと上げた。
テレビに映ったPCのディスプレイ上に、ウェブページファイルや動画ファイルのアイコンが並んだフォルダ画面が示される。
中央には『すべての項目を完全に削除しますか?』とウィンドウが表示されていた。
「消しちゃお」
黒宮の言葉とともに、削除作業中のウィンドウが画面中央に浮かび上がった。なかなかに大容量なのか、進捗を知らせるバーが色づいていくのが遅い。
その作業も終わらないうちに、黒宮は未だ開いた口が塞がらないといった具合の櫻井に向き直った。
「一応言うと、動画とか証拠の残るようなものは、今消したのが全部」
黒宮の声は、少しだけトーンが低い。
その声で我に返った櫻井は、瞬きを繰り返してから表情を引き締めた。
「またいつもの悪ふざけか?そうやって……」
「あー分かってるよ、そうだよね」
櫻井の言葉を遮るように口を挟みながら、黒宮は液晶隣のコンピューター本体を抱えた。
櫻井がその動作を意味を図りかね、理解し、しかしまさかと思った瞬間だった。
ガシャアアアアアアン!!!!!
音の派手さに、櫻井は立ち上がりかけるほどに身体を跳ねさせた。
黒宮がコンピューターを頭の上まで持ち上げたあと、思い切り床に叩きつけたのだ。
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