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解放 -12-
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「2・・・1・・・」
「……カハッ!ゲッ、ェッ……ハッ……」
カウントダウンの終わりと同時に、武上の手が離れた。急に気道が開いたところに急速に空気が流れ込み、黒宮は何度も空気を吸い込んではむせてを繰り返した。
その間に武上はベッド脇に立ち上がり、その様子をずっと見ていた。その顔には、24時間と少し前と同様に、なんの表情もない。
「本日は休暇をいただけたこと、まことに有難く思っております。水と簡単な食べ物をお持ちします。ベッドは俺が処理しますので、その間にシャワーで身体を流してください」
抑揚のない声と、黒宮がケホッケホッと咳き込む声が混じる。
「……その前に、1つ仕事だ」
黒宮が呼吸も落ち着かないままに、拘束された両手で身体を起こした。
「かしこまりました、何なりとお申し付けください」
黒宮は呼吸を1つ飲んでやっと落ち着かせると、裸で失禁まみれのベッドにいることも無視するかのように、涼しげな顔をした。
「お前が今日撮った俺の映像、全部消せ」
「了解いたしました」
武上も表情一つ変えずに、当然というように黒宮の指示に頷いた。
「その前に、手錠をお外しします」
武上は黒宮の身体の横に回って、黒宮を後ろ手で拘束しているベルトを外し始めた。黒宮はそれを待ちながら、視線は武上の股間を睨みつけていた。
「なに勃起してんの」
「申し訳ありません」
武上は手枷を外し、それを両手に持ちながら黒宮を見下ろした。
「今日一日で得た一番の報酬をあっさりと無下にされたショックで、興奮が抑えられないところでして」
そうは言いつつも口ぶりは淡々としている。
「気持ちを職務に切り替えきれていないのは俺の落ち度です。ですが……」
黒宮は拘束から解放され、赤いままの手首をプラプラとさせている。武上が付け加えた一言を聞いているのかいないのかといった風だ。
「記録媒体に複製して、櫻井と香月に譲り渡した映像については、すぐには消せません。そちらについてはいかがいたしますか」
「別にいい、その2人だけでしょ」
黒宮の答えは早かった。
「そんなことより、お前は退職届でも何でも、俺に突き付けなくてよかったの?」
黒宮がベッドから立ち上がると、身体の濡れた箇所を武上がタオルで押さえはじめた。
「そのような気持ちは毛頭ありません、それは黒宮さんもご理解しているところかと思いましたが」
「まぁね」
下半身を中心に身体を拭かれている間、黒宮はンーッと背伸びをし、首をゴキゴキと鳴らしている。
「毎日これだけ一緒にいれば、別に分かる必要もないことも分かるし。それに……」
自分の前にひざまずく武上に、黒宮は視線を落とす。
「何だかんだ、お前は重宝してるよ。手放したいとは思ってない」
武上は一度顔を上げ、立ち膝を突いて恭しく頭を下げた。
「あなたにお仕えすることが、俺の最大の幸福です。そのお言葉ひとつで、俺の人生すべてが報われます」
「まだ素が出てる、口数も多い」
「申し訳ありません」
武上は立ち上がると一歩引き、また頭を下げた。
「あーもう……一日動けなかったし身体バッキバキだし。武上、メシはピザ頼んでくれればいいから、シャワーのあとマッサージ。あともうそのベッド捨てて、おんなじの買っといて。あとパソコンも新しいの一式見繕って買って」
「かしこまりました。それでは、本日はリビングに布団を敷きます」
「うん、そうして」
ペタペタと足音を立て、黒宮はバスルームへと歩いていく。武上はその背中を見送ったあと、1人瞼を伏せて微笑んだ。
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