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実はそこには秘書もいた。
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『×××ちゃんもうヤメテっ!その人死んじゃう…っ!!』
『――死んじゃえばいい…
僕からようちゃんを奪って行こうとするヤツなんて…!』
『ヤメテ×××ちゃんっ!その人、僕に何もしてないよっ?!
だからヤメテっ…お願い…っ!』
『コイツ…ようちゃんの事を何処かに連れて行こうとしてたじゃないっ!
こんなヤツ…!』
『×××ちゃんっ!!』
―――――ッ、なんで…
朧げな過去の光景が…
洋一をその場から動けなくする…
―――なんで今更あんな昔の事を…っ、
「――なせ…」
―――思いだしたくなんかなかったのに……なんで…っ、
「――い、みなせ…っ、」
―――大丈夫……だいじょうぶだよ……
あの人は自分で自分の目を潰しちゃったけど……
それでも死んでは――
「…ッおい!皆瀬っ!」
「――ッ!?は、はいっ!?」
命が自分を呼ぶ声に洋一はハッと我に返ると
いつの間にか“nymphee”に戻って来ていた命が洋一の肩に手を置き…
俯いてその場に棒立ちしている洋一の顔を心配そうにのぞき込んでいて――
「…お前――俺が居ない間に何があった…?顔……真っ青だぞ…?」
「ぁ…大丈夫…です…」
「…余り――大丈夫そうには見えないが…」
命の手が
俯き、洋一の顔に影を落としている原因となっている垂れた前髪を
掻きあげようとしたその時
「―――ッ!?嫌だっ!!」
「ッ!?いっ…、ッ…」
バシィッ!…と
洋一の手が前髪に触れようとした命の手を思い切り払いのけ…
洋一自身がその音と感触に驚いて、手を振り上げた時の姿勢のまま固まる
「あっ…」
「皆瀬……お前――」
「ッ…おれっ…何て事を…っ!
ごめっ、ごめんなさい…っ!俺……そんなつもりじゃ…、」
自分の仕出かしてしまった事に洋一は真っ青になりながら狼狽え始め…
それを見た命が尚も狼狽え続ける洋一の身体をそっと抱き寄せると
その耳元で優しく語りかけ…
「…ッ、」
「…いい。気にするな。
元はと言えば俺が断りなくいきなりお前に触ろうとしたのが悪いわけだし…」
「っでも…っ!」
「いいから!今は兎に角落ち着け。な…?」
「………は…い…」
「…よし。良い子だ…」
まるで子供をあやすかの様に
命は自分の腕の中に納まっている洋一の背中をポンポンと叩きながら
洋一の事を慰め…
洋一もじんわりと伝わって来る命の体温に安心したのか
徐々に落ち着きを取り戻して行く…
そうやって2人は暫く無言で抱き合っていたが――
やがて命がスッと洋一の両肩に手を置き
身体を離しながら俯いている洋一の顔を覗き込むと…
未だ黙り込んでいる洋一にその様子を尋ねた
「…どうだ?皆瀬……少しは落ち着いたか…?」
「ぁ……はい…」
「…何があった…?」
「ちょっと……昔の事を思いだしてしまって…」
「昔の事…?」
「はい…」
「…どんな事か尋ねても?」
「ッそれは――
ごめんなさい……今は話したくありません…」
「そうか…」
「……ごめんなさい…」
「…いや、いいんだ。
悪いな。答えにくい事を聞いて…」
「………いえ…」
「………」
再び表情が曇り出した洋一に命はそれ以上の事を聞くのは止め――
2人の間に気まずい沈黙が流れる…
そんな中……洋一の上着のポケットに入れていたスマホの着信音が
無音の店内に鳴り響き渡り――
洋一は暗い表情のままハンガーにかけていた上着のポケットからスマホを取り出すと
着信のあったメール画面を見て、洋一の表情が少し和らいだ…
「浩介…」
「………」
洋一が嬉しそうに呟いたその名前の人物に
命は少しムッとしながら洋一にメールの内容を尋ねた
「…確か篠原だったか……メールには何て?」
「あ!えーとぉ~……今日の20時に新しく開店した居酒屋で
2人でパーっと飲まないかって…」
「ふぅ~ん…」
命が面白く無さげに生返事を返す…
すると程なくして店の店主が奥から現れると、命に声をかけた
「命様。」
「…それで――皆瀬のスーツは何時頃納品できそうだ?」
「状況にもよりますが……早ければ10日以内にはお届けできるかと…」
「10日か……佐伯、この10日以内に何かしらのパーティーなどの予定は?」
「特に御座いません。」
「…そうか。なら納品出来次第、既に伝えてある住所にスーツを届けてくれるか?」
「ではそのように……お支払方法は如何なさいましょう?」
「いつも通りカードで。佐伯、手続きを頼む。」
「分かりました。」
「では佐伯様…こちらの方へ――」
そういうと2人は店の奥に消えていき…
命はそれを見届けると、パッと洋一の方へと向き直り――
物凄い覚悟を決めたかのような表情でその口を開いた
「…皆瀬。」
「…?なんでしょう…?」
「…俺もつき合う。」
「――え…?何に??」
「居酒屋。俺も付き合う。」
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