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雨は降り続く 2
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「――僕の家族は、あなたと出会った時に殺された」
夜。殺し屋との激しい戦闘で壊れてしまった黒い傘を胸に抱いて、ミナギはそう呟いた。
俺が黙っていると深呼吸し、さらに「僕は容姿も性格も血液型も、家族の誰とも似ていなかったから出生届も出されず監禁されていた」と付け加える。
普通は、遺伝子の構造上は両親の特徴を受け継ぐはず。身体的にも性格的にも。それが、○○君は違った。出生時の血液検査も、両親とは違うもの。
父親は母親の不倫を疑ったが身の潔白は明らか。余計に、○○君は異形の子として忌み嫌われる。
生まれてすぐ、幼少期の記憶は成長するにつれてなくなるものだが。○○君は今でも覚えている。何度も殺されかけたのだと。
「警察の犬になったのは、存在しない僕は犬に使いやすいからと父親が警察に売ったから。でも僕が調教され賢く強くなると、父親はさらに金を要求するようになった」
「反吐が出る。最低な家族だ。飼い主の方がよかったか?」
深くうなずく。紡がれる真実に、俺は驚かない。静かに、彼が全てを吐き出すのを見守る。
「調教はすごく厳しくて、いっそ死んでしまおうかって何度も思った。でも、家に帰ったらとびきり優しくて、温かくて。その優しさは、藤代さんによく似ている」
最悪な家族から○○君を救ってくれたのは、俺の前の飼い主。○○君からすれば、後光が眩しい神様に見えたのかもしれないな。
前の飼い主のことを語るミナギの表情は今までに見たことのないくらい柔らかく、温かい自然な笑み。○○君が欲するのをやめた愛を、前の飼い主は与えてくれた。
会ってみたかったな。ミナギの飼い主に。いや、本当は、もう会っている。
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