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雨は降り続く 6
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「お前が“存在しない者”でもこの数年間、普通に暮らしてこられた。もしもまた危険な目に遭っても、俺はお前を守る。嫌だって言っても命がけで守る。じゃあ、俺のことは?」
「当然僕が守るよ。飼い主を守って死ねるのなら、本望――」
「お前は元警察の犬だって言っただろ?今は違う。犬じゃない、他人のミナギが、俺を守ってくれるっていうのか?」
「っ!た、にんって……僕は……」
距離を詰め、両手を壁について見下ろす。ハッ!と顔を上げたミナギの唇は、強く噛みしめていたせいで血がにじんでいる。
ワナワナと震える唇。俺を映す漆黒はプールになって、俺の顔がゆがむ。
泣くか?泣けばいい。わざと追い詰めているんだ、こうでもしないとミナギは俺と向き合ってくれないだろう?
俺の顔が怖い?容疑者を尋問しているみたいだ?いや、そこまで怖くはないだろう。ミナギが泣きそうになっているのは俺が怖いからって、そうじゃないって。
ミナギ、今何を考えている?まさか、この期に及んでどうすれば、何を言えばこの場を切り抜けられるんだろうとか考えてねぇよな?
逃げられるわけ、ねぇだろうが。物理的にも。ミナギは俺の腕と壁に挟まれているんだし、暴れてもよく鍛えてある警察の俺が崩れるはずがない。わかってるだろ?
あと少しだ。あとひと押しで、ミナギは完全に崩れる。
なぁ、もう楽になれよ。お前は警察の犬を卒業だ。寿退社。そうなればお前は本当の意味で、人間になれる。1人の人間、ミナギとして俺の隣にずっといてくれ。
だから――
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