アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
平凡なオメガの大学生ですが、この度『自称女嫌い』のインキュバスを拾いました。
呆れるほどの、お人好し 2
-
「ま、こんなこと言ってるけどさ。そこが幸大のいいところだし、無理に変えなくてもいいって、思う気持ちもあるんだよ」
政利が水を飲んで、笑う。……素朴だけれど、愛らしい顔立ち。そんな奴が笑みを向ければ、普通の奴ならば一瞬で恋に落ちるのだろう。……俺は、違うけれど。
「……それは、褒めているのか?」
「褒めてる褒めてる。俺、幸大のこと大好きだから」
にっこりと笑ってそう言う政利は、罪な奴なのだろう。人によっては、自分に気があると勘違いしてしまう。俺は、こいつに相思相愛の恋人がいるのを知っているから、変な気持ちは抱かないけれどさ。
「あっそ。……どっちでもいいけれど、食わないならくれ」
政利の持つ皿の上に載った野菜を見つめて、俺がそう呟く。そうすれば、こいつは「どうぞ~」と言いながら皿を差し出してきた。
……案外好き嫌いが激しいんだよな、政利って。
「俺らっていいコンビだよねぇ。……今後とも、幸大とは仲良くしていきたいよ」
「それは、食の好みが真逆っていうだけだろ」
俺が嫌いなものを、政利が好きで。政利の嫌いなものを、俺が好き。
そういう関係っていうだけ。それ以外には、いいコンビだと思える要因がない。……いや、性格もある程度は相性がいいのか。
「それもあるけれどさぁ。……って、あ。ごめん、電話だ」
「なんだよ。恋人から?」
ちらりと政利に視線を向けてそう問いかければ、奴は「うん」となんのためらいもなく頷いた。
「じゃ、行ってくれば。……俺は後で追いかけるし」
「ごめんね」
全く悪びれた風もなく、政利はトレーを持ってさっさと立ち去った。
……ったく、本当に相思相愛なことで。……羨ましい……わけじゃ、ないけれど。
(そういや、政利の恋人の写真は見せてもらってけれど、実物に会ったことはなかったな)
見せてもらったというよりは、一方的に見せられたというか……。
素朴だけれど、割と誠実そうな奴だったと思う。ちなみに、大グループの重役の息子だとか、なんとか。
……玉の輿か。
(ま、俺には関係のないことか。親友が幸せになれるのは嬉しいけれど)
そう思いつつ、俺はご飯をかきこむ。
政利がいなくなれば、話す相手もいない。だから、俺は側にあるテレビを見つめる。
きれいなニュースキャスターが、てきぱきと原稿を読み上げている。テロップには『|羽鳥《はとり》グループ、歴代最高の利益』とかなんとか、書かれていた。
(へぇ、羽鳥ねぇ)
その名前は、割とよく聞く。だって、国でも有数の大グループだし。時期によっては連日テレビに取り上げられているし。
そこの社長は有能らしいけれど、なんていうか人付き合いの苦手そうなタイプだと思った。……いや、確証なんてない。ただ、見た目だけの話。……見た目で人を判断するなって、話だけれど。
(ってか、なんで俺は羽鳥グループの社長の顔なんて覚えているんだよ……)
自分でも、それが不思議だった。ただ、母さんが……なんていうか、懐かしそうにその男の顔を見つめていたから。
無意識のうちに、覚えてしまっていただけなのだろう。……片想い、してたのかな。けど、そういう素振りなかったし……。
「どちらにせよ、子持ちでオメガの男だったら、相手にされないだろうしな……」
ぽつりと、そう呟いてしまった。世間はオメガを冷遇する。だから、なのかもしれない。
……俺も、こういう風に思ってしまうのは。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
3 / 9