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平凡なオメガの大学生ですが、この度『自称女嫌い』のインキュバスを拾いました。
自称女嫌いのインキュバス!? 1
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「汚いけれど、文句言うなよ」
端的にそう告げて、俺は部屋の鍵を開けてドアノブを回した。
室内はお世辞にも広くないワンルーム。中は雑多としていて、物に溢れていた。
「……お邪魔します」
男がそれだけを告げて部屋に入ってくる。玄関で靴を脱いで、律儀にもそろえながら。
「あ、そういや、名前……」
ローテーブルを組み立てながら、ふと男の名前を聞いていないことに気が付く。
名前くらい、知っておいたほうがいいのか? あと、ついでに俺も名乗ったほうが……。
「……俺は、アレクシス。アレクシス・ラルエット」
「あ、れくしす……」
どうやら、男は外国人だったらしい。いや、この容姿からすればおかしくないけれど。でも、なんていうか不思議なんだよな。
(この男、日本語流暢だな……)
外国人ならば、もう少したどたどしい日本語になるのではないだろうか? それとも、生まれる前に両親がこっちに引っ越してきて、育ちは生粋の日本なのだろうか?
「……キミは?」
アレクシスが、きょとんとしつつそう問いかけてくる。あ、俺も名乗るのか。
「俺は須永 幸大だ」
「……じゃあ、幸大」
馴れ馴れしく名前で呼んでくる男、アレクシス。いや、外国だとそれが普通なのかもしれない。……この男が外国育ちなのかは、知らないけれど。
「ところで、アレクシスは何処の国出身だ?」
ローテーブルを組み立て終えた俺は、そう問いかけた。アレクシスっていう名前は、何処の国のものなのだろうか?
「……どうして?」
「いや、なんていうか、気になるじゃんか」
この男、まじまじと見れば俺と同年代だな。心の中でそう思いつつ、俺はローテーブルを部屋の中央に置いて、アレクシスを見つめた。アレクシスは、きょとんとしていた。
「俺は、表向きにはフランス人だよ」
へぇ、フランス……。まぁ、顔立ちからしたら妥当かもしれない。でも、表向きにはって……。
(裏があるっていうことか?)
それとも、ハーフとかそういうことなのだろうか? 説明するのが面倒だから、表向きにはって言っているのかもしれない。
俺のこの想像が正解だとは、到底思えないけれど。
「なに食べる……って、聞きたいところだけれど、生憎今から揚げしかないんだよな……。それでいい?」
アレクシスを見つめて、そう問いかける。彼は、こくんと首を縦に振っていた。
なので、から揚げを容器から出して、皿に盛ってから電子レンジに入れる。朝に炊いておいた米を茶碗によそって、気が付く。……アレクシスの茶碗が、ない。
(いや、この際政利のでいいか)
度々遊びに来る政利の分を、借りよう。ごめん、政利。見知らぬフランス人に茶碗貸すわ。
それだけを心の中で謝って、俺はローテーブルの上に茶碗を持っていく。すると、いいタイミングで電子レンジがなった。
「……本当、美味そうだよな」
店長のから揚げは絶品なんだよな。だから、もらえるときは本当にうれしい。数少ない楽しみともいえる。
「おかずこれしかないけど、我慢してくれ」
ローテーブルの中央にから揚げが載った皿を置いて、俺はアレクシスの前に腰掛ける。箸は割り箸を用意した。
「……あれ、でも、もしかしてフォークとかのほうがいいか?」
不意にそう思って、そう問いかける。アレクシスは、首を横に振った。
「大丈夫。俺、日本暮らし長いから」
「そうか」
まぁ、これだけ流暢に日本語が話せるんだったら、そうなんだろう。薄々、感じ取ってたけれど。
「じゃあ、食うか」
「うん」
アレクシスが頷いて、俺は「いただきます」と呟いてから揚げに箸を伸ばした。
(っていうか、から揚げだけがおかずってなんだ? サラダくらい、買ってくるべきだったか?)
今更そう思ってアレクシスの顔を見つめるが、奴は目をキラキラさせながらから揚げを食っていた。……問題なさそうだ。
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