アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
平凡なオメガの大学生ですが、この度『自称女嫌い』のインキュバスを拾いました。
自称女嫌いのインキュバス!? 3
-
しかし、どうやら俺の言葉にアレクは不満を抱いているらしかった。奴は少し頬を膨らませて、俺を見つめる。
……イケメンな所為で、やたらと格好がつく。世の中は顔面格差社会だ。
「適当な女っていうけれど、俺、女嫌いなんだけれど?」
そういえば、そんなことを言っていたような気がする。むしろ、そうじゃないとこんなことにはならないか……。
「そりゃそうだけれどさぁ、背に腹はかえられないだろ?」
嫌い嫌いと言っていても、腹は膨れるものじゃない。呆れたような視線をアレクに向けてそう言えば、アレクはローテーブルに頬杖をついた。
その真っ赤な目が、俺のことを射貫いている。……心臓が、大きく音を鳴らしたような気がした。
「あのね、幸大。……女は、怖い生き物だよ?」
「……は?」
「俺は知っているんだ。女っていうのは、肉食獣だ」
……こいつは、一体なにを言っているんだろうか?
(そりゃあ、確かにそういう奴もいるだろうけれど……)
それともなんだ。モテるという自慢なのか。美形の男を女は逃したくないということなのだろうか。……意味わからん。
「というわけで、俺は女と性行為……どころか、キスも嫌なの」
「じゃあ、どうやって生きてきたんだ」
ジト目になりながら、アレクを見つめる。アレクは「そりゃあ……」と言って、視線を斜め上に逸らした。
多分、人に言えないことをしているな、こいつ。一瞬でそれを悟った。
「まぁ、いいよ。……食べ物でも一時的に腹は膨れるんだろ? だったら、適当になにか食べて生きていけ」
そこまで言って、俺は茶碗を持ち直す。そのままもう一度箸を持って、から揚げを口に運んだ。……ちょっと冷めてる。
「うん、そうする。……でも、俺、今一文無しなんだ」
「そっか」
うんうん、一文無しっていうか、貧乏は辛いよなぁ……。
心の中でそう相槌を打って、アレクを見つめる。……奴は、その真っ赤な目をキラキラとさせていた。あ、なんていうか嫌な予感が……。
「あのさぁ――」
「却下する!」
こいつ、絶対にろくなことを言わない! 俺の直感が、そう告げている。
「大体、働けばいいだろ、働けば!」
「……この人外に、働けるような場所があると?」
それもそうだな。納得した。
「なんだっけ、戸籍? みたいなの、俺にはないわけだし。無理無理」
けらけらと笑って、アレクがそう続ける。……無理って、諦めるのが早すぎないか? けど、確かに戸籍がないのは辛いな……。
「今までは?」
「そりゃあ、適当に野宿だよ、野宿。もしくは、知り合った人に泊めてもらうとか」
「……そっか」
つまり、親切な人に拾ってもらって、泊めてもらう生活をしていたと。なんていうか、プロのヒモだな。……少し違うか。
「……お前、なにが出来る?」
「うーん、家事全般は出来るよ。あとは……そうだな。人を癒すことは、出来るかなぁ」
人を癒すって、どうやって癒すんだろうか……?
微かな興味。が、口には出せなかった。なんだか、とてつもなく嫌な予感がするから。
(でも、家事全般が出来るんだったら、置いておいても別に不都合はないんじゃ……?)
頭の中にそういった考えが浮かぶ。それに、食べ物だって俺のを分け与えればいいわけだし。……かといって、この手狭な部屋に大の男二人だぞ? それこそ、無理だ。圧迫する。
「……ちゃんと、しばらくしたら出て行けよ」
なのに、俺のその考えとは裏腹に口はそんな言葉を紡いだ。アレクが、大きく目を見開く。
「あと、家事全般は任せるから。……それだけ、してくれればいい」
そこまで言うと、アレクの表情がぱぁっと明るくなった。……その表情は大層魅力的にも見えてしまう。……心臓が、とくんと跳ねた。
「ありがとう、幸大!」
「うわっ」
アレクが移動して抱き着いてくる。鬱陶しい!
「絶対に、絶対にいつかは出て行けよ!」
何度も何度も、そこを強調する。アレクは「はいはーい!」と気のいい返事をしていた。
「俺、頑張って幸大の役に立つから!」
……なんだか、大型犬を飼った気分だ。そう思いつつ、俺は項垂れた……のだが。
「っつ!」
頬に、温かいなにかが触れた。驚いてそちらに視線を向ければ、そこにはしてやったり顔のアレクがいた。
……どうやら、頬にキスされたらしい。
「な、なっ!」
「挨拶だよ、挨拶」
アレクがウィンクを飛ばして、そう言う。……挨拶で、済ませられるか!
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
8 / 9