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可もなく不可もない俺の退屈で平和な日常
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成績も運動神経もそこそこ、中肉中背。特技もないし、夢中になれるものもない。
可もなく不可もない、どこにでもいる普通の高校二年生。それが俺、中野良典《なかのよしのり》だ。
「なんか面白いことないかな」
授業の合間、もう口癖のようになっていることを呟く。
「だな~」
前の席に座っている南啓介《みなみけいすけ》から、いつもと同じ相槌が返ってくる。
中学から一緒の南との間では、もう何十回、何百回と繰り返されたやりとり。二年になって新しいクラスに変わっても、相変わらず俺たちは進歩がない。
退屈で平和な俺の日常を変えたのは、南の一言だった。
「じゃあさ、高島美穂《たかしまみほ》に告ってみたら?」
「はあ? 秒でフラれるだろ」
いきなり何の脈絡もなくそんなことを言い出され、つい真顔になってしまう。
「意外とそうでもないかもよ? 高島さんってハードル高すぎて、逆に告る男いなさそうじゃん」
「無理だって」
南は、教室の真ん中でクラスメイトに囲まれている高島さんをチラリと見た。
俺も何気なくそちらを見る。
ポニーテールがよく似合っている高島さんは、うちのクラスの学級委員で、部活はバレー部。身長はたぶん160センチ前後で、スタイル良し、顔良し。
昔から、学年に一人くらいはいるよな。
勉強も運動も出来て、顔も良いのに、性格まで良くて、みんなから好かれてるやつ。高島さんは、まさにそれ。
みんな大好き高島さんに俺みたいなド平凡なモブが告白しようだなんて恐れ多い。
高島さんに告白するなら、それこそ高田恭《たかだきょう》みたいなやつじゃないと。高島さんと同じようにたくさんの女子と男子に囲まれて笑っている高田は、相変わらず今日も顔が良い。
高田は、男版高島さんみたいなやつだ。
バスケ部のエースで、身長は180センチ超。成績優秀で、顔良し性格良しと、非の打ち所がない。
高島さんと高田って仲良いし、そのうち付き合ったりして。高島さんと高田がくっつかなくても、カーストトップのやつらは同じレベルでくっつくだろうし、その他大勢の俺なんて相手にもしないだろ。
「高島さんに彼氏いるって聞いたことないし、今がチャンスかもよ」
「ないって。そもそも、俺は高島さんが好きなわけじゃないし」
「高島さんに告られたら断るのかよ?」
「それは付き合うけど。高島さんから告られて断る男いないだろ」
即答すると、だろ?と勝ち誇ったような顔をしてくる南に無性にイラついた。その顔やめろ。
「もし万が一おっけーもらえたら、最高。フラれても、あの高島さんに告る勇気があるなんてって尊敬されるぞ?」
「されねーし、億が一にも成功しねーよ」
面白がってるのか何なのか知らないけど、南がやたら絡んできてウゼー。引き気味で対応していら、南が突然身を乗り出した。
「いいのか? このままだと、一生平凡で退屈なままだぞ」
南からそう囁かれ、思わず息をのむ。
全てに置いて平凡な人生がつまらないとは思ってた。けど、何か行動しようという気は特になかったというか……。
そこまで考えて、つくづくビビリで退屈な自分に嫌気がさす。
「俺、高島さんに告白するわ」
何を血迷ったのか、気がつくと俺はそう口にしていた。
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