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小池視点
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「あの人また来てる」
「あら、ほんとねえ」
俺の声に反応してパートの花絵さんが頬に手を当てた。目線の先には、銀髪に切れ長の黒色の瞳をした、端正な顔立ちの男性がいる。
「ほんっと!目の保養だわ〜。」
韓国ドラマのイケメン男優を見てるときみたいなにやけ顔をしながら、こそこそと花絵さんが喋りかけてくるのに苦笑いを返す。
俺がこのコンビニバイトを始めて早数ヶ月。
毎回決まって夜の0時過ぎ頃に彼はこのコンビニにやってくる。
いつも決まって、ブラックの缶コーヒーと甘いミルクティーのペットボトルをレジに持ってきて一言
「11番3箱」
と、声をかけてくるのがお決まりのルーティンになっている。そのルーティンを覚えたのはいつ頃だったろうか。
俺は11番の棚からセブンスターの7mmを取り出してレジに置いた。
「こちらでお間違いないでしょうか」
「ああ、合ってる」
返事を聞いてから会計をしていく。
精算を終えると、すぐにスタスタと立ち去っていく彼からは、いつもタバコの匂いと混ざってとても甘いバニラの香水のような匂いがしていた。
その残り香が俺は好き。
「お疲れ様でしたー」
仕事を終えると、挨拶をして裏口の扉に手をかけた。
「あら〜お疲れ様。いつも遅くまでご苦労様。はい!これ飴ちゃん」
呼び止められて、花絵さんが俺の手に飴を1つ乗せてくれる。
「ありがとうございます。お疲れ様です」
それを握りしめたまま俺は裏口からコンビニを出た。
「バニラ味……」
クリーム色のパッケージに書かれた文字を見つめながら、あの人の残り香を思い出す。
(明日も来るのかな)
駐輪場に置かれている自転車に跨り、飴の袋を破って口の中に放る。コロコロと口内で転がしながら、バニラの香りを感じて口元を綻ばせる。
地面を蹴ると、鈍い音を立てながら自転車が走り出す。もうすぐ本格的な冬がやってくる。
はーっと息を吐き出すと、白いモヤが空気へと溶けて消えた。
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