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卒業かぁ。三年間、あっと言う間だったな。今では親友になった拓真とは高校になってから知り合った。高一のときに同じクラスになって、三年までずっと同じクラスだ。
でも、その拓真とも大学は別々だから今までのように一緒に遊ぶことも少なくなるだろな。そう考えると寂しい。それでも、週末なんかは会うだろうな、と思ってる。
一番寂しいのは涼介だ。いや、涼介とも全く会えなくなるわけじゃない。たまには一緒に家で食事することもあるだろうし、放課後や週末に会うことはできるかもしれない。拓真と同じだ。
でも、わがままなんだろうな。それだけじゃ物足りないって思ってしまうのは。それぞれサークルなんかに入るだろうし、バイトもするだろうし、なにより新しい友人もできる。そうしたときに今のように俺を優先にはできなくなってくる。今がどれだけ贅沢なのかわかる。
「陽翔、どうした?」
その声で我にかえる。今日は涼介がうちに来て食事をしているんだった。ほんとは里奈ちゃんも来るはずだったけど、友達と食べに行ったから涼介だけが来た。
「心ここにあらず、って顔してるぞ」
そんな顔してるのか、俺。
「最近、そんな顔多いのよ。放っておいて大丈夫よ」
心配そうな涼介とは違い、軽い母さん。当然だけど母さんは心配なんてしていない。涼介だけが気にして、食後俺の部屋に行った後も訊かれる。
「どうした? 何か心配ごとか?」
尋ねる声は優しくて、余計に好きになってしまいそうだ。
「いや、卒業なの寂しいなって思って。学校の友達なんかも会わなくなっちゃうし」
「なっちゃうし?」
「それに……涼介とも会えなくなる」
ちょっと待て。今のは幼馴染みとしてありな範疇? ポロっと出た本音に一瞬焦る。
「会えるよ。家、近いんだし」
「そうかな? でもサークルとかバイトとか。それに新しい友達もできるし」
「環境が変わっても俺が陽翔を優先するのは変わらないよ」
「ほんとに?」
「ほんと。約束するよ」
「うん。約束な」
「だから元気出せ。陽翔は笑ってるのが一番似合うから」
面倒くさい女みたいなこと言ったのに、涼介は面倒くさそうな顔はせずに約束してくれた。幼馴染みの俺にでもこれだけ優しいんだから、好きな子にはもっとなんだろうな。涼介を独り占めできるのは今だけだ。そう思うと余計に悲しくなる。
「ごめん。面倒くさいよな」
「そんなことないよ。環境が変わるんだから当然だよ」
「涼介にもある?」
「あるよ。陽翔と違う大学なのはやっぱり寂しいし。でも陽翔が小さい頃からの夢である獣医に一歩でも近づけるのは応援したいから」
あぁ、やっぱり優しいな。そんなに優しかったらいつまでも涼介から卒業できないじゃないか。
「陽翔が望むなら、俺はずっと陽翔のそばにいるから寂しがる必要ないよ」
ずっといて欲しいよ。でも涼介にはずっと好きな人がいるじゃないか。なら、その人と結ばれるまでは望んでいいかな? 涼介がその人と結ばれたら諦めるから。だからそれまでそばにいて……。
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