アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
✽溜色と満月✽ 6
-
翌日土曜日は宮内省も半ドン(半日休日)で、近衛は言うていた通り昼過ぎにはワインを持って帰ってきた。
折角だからとトシとみき、それから武雄も呼び、屋敷に住む皆で昼餉と共に飲もうかと近衛は言い出した。
「下女の私達が旦那様達とご一緒するなんてとんでもない!!」
直ぐ様断ってきたトシに近衛はからからと笑う。普通の女中は主人に声を荒げて物申したりしない。少なくとも近衛本家にいた20名を超す女中はそうであった。トシのこういう所が私には有り難く、とても気に入っている。
「そう言うな。私達はもう家族の様なものだ。あぁ、では、昇進祝いの礼という事でどうだ、付き合うてくれるか?」
はぁとあからさまに溜め息を吐いたトシは「では有り難く一杯だけ頂戴致します」とソファーではなくカーペットに正座した。
「私も那由多もトシの言う事を聞いてきちんとスリッパを履いてるぞ?床は冷える、ソファーに座れ」
その言葉に那由多は「諦めて下さいませ」とトシを立たせるとソファーに促し、おろおろしているみきもトシの隣に座らせた。「どうぞ」と促せば武雄は素直に座ってくれ、皆で一緒に食事をするのは初めての事で、那由多はご機嫌であった。
「人手を増やそうと考えてはいるんだがな、中々良い者が見つけられず、不便をかけてすまない。朝も早くから遅くまで大変だろう。成る丈早く見つける故、今少し辛抱してくれるか?」
この時代、住み込みで働きたいという者は大勢いる。なれど近衛は中々良い人材を見つけられないでいた。同じ屋根の下に暮らす者故、慎重に選びたいという気持ちが強く、何人も直接来てもらい会うてはみていたが、那由多に囲いの陰間を見る様な眼差しを向ける者もいれば、近衛にそれとなく色目を使う者も居たりで、そこはトシがばっさりあの方とは働けませんと口を出していた。
「不便は御座いませんよ。何度申し上げても那由多様がちょこちょこ私達の仕事を為さって居られますからね!私はこれ以上の人手はいらないと思いますよ。後はみきに聞いて下さいまし」
然りげ無く叱られたなと那由多は笑うて誤魔化したが、もう一年半程共に住んでいる。トシのこの言い様だと諦めてくれたのだなと思うた。
「みきはどうだ?大変だろう?」
「前の御屋敷よりはるかに楽ですし、お休みまで頂いてます。私もトシさんと二人で問題ないかと」
前に居た屋敷では15、16時間労働は当たり前。その上、休みは年に2回だった。トシさんに聞けば、何処もそれが当たり前だという。こちらでは朝は早いが、夕餉と風呂を終えれば旦那様も那由多様ももう休めと言うて下さるし。
トシさんに言わせると、早く御二人きりになりたいんだろうからと。だから遠慮もせずに上がらせてもらってる。正直、本当にこれで良いのだろうかと内心不安に思っているくらいだった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
13 / 48