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✽古よりの教え✽ 1 明治31年6月
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年亜季が居なくなってからというもの、那由多は暇を持て余す様になった。
屋敷に籠もり書物ばかり読んでいたが、6月のある日、今日は天気が良いからと、だっと洗濯をしたものの、終えれば暇で暇で。次は何をしようかと庭でつまらないと言わんばかりの顔をしている那由多を見かけて、武雄が声を掛けた。
「あの、手が空いてるのなら、少し手伝ってもらっても良いですか?」
「ええ!もちろんです!」
パアッと明るくなった顔を見て武雄はふと笑うと「着いて来て下さい」と那由多を誘った。
「わぁ〜!今年はたくさんなりましたねぇ、」
「ええ。なので、これを取るのを手作って欲しいんです」
そう言うて武雄は籠を渡した。それを受け取った那由多は梅の実を一つもいだ。花も楽しめ、実もこんなに取れるし、梅は二度、三度楽しめるなと
にこにこもいでいく。
「枝を傷付けない様に気を付けて下さい」
「分かりました」
暫く作業をしていると、那由多が脚立に上り、さらに背伸びしているのを見て武雄は近くに梯子を掛けて見上げた。
「上は俺が取りますから良いですよ」
「お願いできますか、届きそうもありませんでした」
苦笑して脚立から下りようとした那由多を見て、揺れない様に脚立を支えると、下ろした脚から少し覗いた生脚に武雄は釘付けになる。ちらとしか見えないからか、それが逆に色っぽい。
頭の中を艶めかしい想像が駆け巡り、武雄は思わず手を伸ばしその足に触れた。
「武雄さん?」
声を掛けられハッとし「落ちたら危ないですから...」と取り繕った。
「ふふ、危なっかしかったですか?」
「...いや、あの、...すみません、」
「いいえ、ありがとうございます」
慌てて那由多から離れた武雄は梯子に上り、無心で梅の実をもいでいく。手が那由多の足の感触をいつまでも覚えていて、熱が上がっていく。考えるな考えるなと必死に自分に言い聞かせ、黙々と作業をした。
「いっぺんに三つも取れるなんて、真に手が大きいですねぇ」
もう声を聞くだけで心臓がバクバクと煩くなる。なれど先に見た近衛の姿が頭に浮かんだ瞬間、不埒な行動をしてしまった事を悔いて、それ以降、武雄は殆ど那由多と口を利かず、那由多もそれを気にすることはなかった。
もいだ梅の実を纏めると「後はお任せしても良いですか?」と武雄に言われ、那由多はにっこり微笑んだ。
「もちろんです。とても楽しかったです。来年もぜひやらせて下さいませ」
那由多にそう言われ、武雄の胸は弾む。誘ってみて良かった。毎年こうして二人で梅の収穫が出来るやもと考えるとそれだけで満足であった。
「はい。また来年、宜しくお願いします」
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