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✽古よりの教え✽ 4
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寝所のベッドの上、那由多は近衛の脚の間に入り韓非子の説林上を解いてもらっている。
那由多は第二十二の話しを聞き、測り難きは人心だなと思うていた。
「樂羊は功を立てながら疑われ、秦西巴は罪があったけれど信用されたんだ。つまり、人を欺いて言葉巧みに生きる事は、不器用でも誠実に生きる事には敵わないという事だな」
ああ、そういう事かと納得すれば、まるで秦西巴は誰かの様だと那由多はくすくす笑う。
「秦西巴は篤忠様の様ですね。篤忠様も生真面目で実直、なれど不器用です」
「はは、なれどそんな所を好いてくれてるのだろう?」
「ええ。とっても、」
パタンと韓非子解詁全書が閉じられ、パッと近衛を振り返ると、慈しみ深い眼差しとぶつかる。「今日はここまで」と書物を置いた近衛に引き倒され、口付けを受けた。
唇が離れると那由多は近衛の喉仏から舌を這わせ、顎下を少し甘噛する。
「龍の逆鱗に触れてみましたが、このお顔を見るに私はまだ寵愛されているようですね」
「面白い愛憎の測り方だな。那由多は弥子瑕より賢人だ」
「ふふ、私に知恵を与えた事を後に悔いますな。篤忠様は秦西巴の様に誠実ですが、私は樂羊よりも獰猛です。...いざとなったら篤忠様を喰らうやも」
妖艶な顔で笑う那由多を見て近衛の背にぞくりと甘い痺れが走る。
知の難きにあらず、知に処するは則ち難きなり。
知ることが難しいのではない、知ったことを臨機応変に活かすことが難しい。先程そう教えたが、那由多は教えを生かしこうして楽しませてくれるか。そんな事を思いふと笑う。
「那由多に喰われるなら本望だ」
「ふふ、では、お許しを頂けましたので、食われて下さいませ」
近衛の身体に舌を這わせながら思うていた。韓非子を読んでみて良かったと。韓非子も他の書物も難しゅうて、学のない私では解釈が追い付かない。なれど学びを嫌う事はなかった。
真に知りたいのは書物の中身ではなく、それを見て近衛がどう思い、どう感じるのかだから。どんな事が好きでどんな事に感銘を受けるのか、同じ世界を覗いてみたいだけ。
教えを請わずとも知っているのは近衛のこの身体。これは近衛本人より分かっているやも知れない。
何処がお好きで、何処に触れて欲しいか良う知っている。故に意地悪く、触れるか触れないかの微妙な感じでなぞると焦れて居られるのか、近衛は私の髪に指を絡めたり腕を擦ってみたりしていて、その様は暗に触ってくれとねだっている様。
気付いていながら尚もそうしていると、両脇に手を入れられ引き上げられた。
「...那由多は弥子瑕より賢いが、樂羊より忠実ではないな。もどかしくて辛い」
「ふふふ、上君は人の能をつくすです。篤忠様は私を信じてお待ち下さいませ」
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