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バカ高3年生の事情①
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京南高等学校。
それはこの、バカ高と呼ばれている高校の正式名称。
何故バカ高と呼ばれているのか、それは校内のどの方向を見てもバカそうなヤンキーしか目に入って来ない為である。
だがしかし待ってほしい。
バカそうなヤンキーは主に1年と2年とで占められている。
僕のいる3年生は、信じてもらえないかも知れないけど7割ほどが普通の極一般的な高校生ばかりなのだ。
思い返せば1年の時。
2年3年の先輩方に怯える日々が続き、不登校の挙句、自主退学する生徒は数えきれない程で、転校はその倍の数にも上った。
そして2年の時。
新入生がこれまた揃いも揃ってバカみたいなヤンキーばかりで、上下をがっつり挟まれての怯える日々に、ついにクラスがC組まで激減するという異常事態にまで発展した。
最初はGまであったの、うん。
で、今現在に至るわけなのですが。
どうして極普通の一般ピープルがこのバカ高を受験したのか。
皆の回答はどれも同じだった。
「勉強しなくても入れたから」
もちろん僕もですごめんなさい。
楽して入学した罰だと、今ではもうこの学校の事は諦めている。
しかし幸いかな、3年の校舎は1年2年と別になっていて、バカそうなヤンキー共と顔を合わせる事はまずない。
最小限に減ってしまった今の人数をなんとか守ろうと、学校側も僕達3年生にあらゆる気遣いを施してくれ、下駄箱も3年だけ別の場所、校門も3年だけ別の門、という具合に至れり尽くせりしてもらえていた。
こうして卒業までは安泰だな、と余裕でスクールライフを満喫しようとしているのだが、やはりこの3年にも尖ったヤツというのは少なからず存在している。
冒頭で7割が一般人だと説明したと思うけど、残りの3割はバカそうな、とまではいかなくても、そっちよりの人間が占めているわけなのです。
そして僕が一番苦手なクラスメイトと言うのが、不幸にも後ろの席になってしまった大屋元治という人。
もう見るからに目付きが悪い。
そして無口で威圧的。
めんどくさい事は何もしない。
機嫌が悪いとどこでも殴りつける。
金髪で、ピアスばっかりで、ちょっとお洒落で、そして安定のイケメン。
でも怖い。
ただ怖い。
それ以外大屋君には何も感じない。
そんな人が毎日後ろに居ては、勉強もはかどらないというかもともとまあ勉強なんてあまりしてはいないんだけども。
金髪は金髪で集めてクラスでも作って欲しかった、と、僕は大いに先生を恨んだ。
そして今日も特に問題なく学校を終えるはずだった。
はずだった僕の目の前に、物凄く慌てた親友が駆け寄ってきた。
「ちょ、どうしたのミッチー」
「お、おま、お前っ、」
どれだけ全力疾走してきたのか。
何かを僕に言いたいんだろうけど、乱れた呼吸が邪魔してミッチーはなかなか話せないようだ。
落ち着いて、と背中をさすって、とりあえず椅子に座らせた。
「なあ、塚ちゃん、お前さ、何かさ、1年と2年の間で噂になってんだけど」
「………ごめんミッチーその先何となく聞きたくない逃げたい逃げていい?」
1年と2年だと?
この極一般ピープルのこの僕が下級生の噂になってるだと?
「いーーーやーーーーだーーーーー!聞かないから僕!!あっち行けよばか!!」
耳を塞ぐ僕の手を耳からバリっと剥がし、聞きたくないと言っているその内容をミッチーが遠慮なしに話そうとして来る。
全力でその口を塞ごうと頑張ったけど、背も力もない僕の全力はあっさり封じられてしまった。
「塚ちゃんさ、なんか、3年のボスになっちゃってるよどうする?」
「………………」
「そいでさ、2年のボスに屋上と言う名の楽園を略奪されて、怒った塚ちゃんは2年のボスを狙ってるんだって」
「………なにそれワロエナイ」
「これもう1年と2年の間で当たり前のように噂されてるっていうかもう事実として話が流れてるから、否定するのは難しいね」
「ミッチーなんでそんな楽しそうなの…」
「え!別に楽しくない事もないけど!」
「……もうい、」
ごめんちょっと待って頭がパンクしそう。
何でこの一般ピープルの代表とも言えるこの僕が、3年のボスとかいうものになってしまっているんだろうか。
意味がわからない。
意味がわからない。
大事な事なので3回言っときます。
「意味が!分からない!というかそれで僕はこれからどうなるの教えてえろいミッチー!」
「何かさー、今このバカ高のトップ争い的な流れになってるらしくて、そのうち1年か2年のボスが塚ちゃんに死刑宣告しに来るんじゃないかと」
「ミッチー!僕学校辞めるね!!ありがとう!!乙でした!!」
鞄に教科書を詰め込み、僕は立ち上がった。
本気でもう辞めようとこの時は思っていたんだよ。
だってこんなの誰だって逃げたくなるじゃないか。
でもね、でもね。
「石塚、座れ」
教室の戸口に足を向ける僕の背後から、滅多に聞こえないその声が聞こえて身が竦んだ。
うん、僕の苦手な人、大屋君。
君いつの間に後ろにいたの?
そして何盗み聞きしてるの?
固まりながら首だけを捻れば、物凄く怖い顔をした大屋君が見えてやっぱり帰る!って僕はまた戸口に足を向けた。
「座れっつってんだろ」
前にあった椅子をガン!と蹴られて、更に僕の体が竦み上がる。
でもなんか屈したくなかったし、それにもう学校辞めるつもりだから大屋君と喧嘩して険悪になったって別に問題はないと思った。
「やだよ。僕もう学校辞めるから大屋君ともばいばいだね!!大屋君怖いからどっかで見かけても絶対声なんて間違ってもかけないでねさよなら!!」
乙!!乙!!って何か言いたげに開いたその口を封じ込めるように僕は大きな声でそう連発しながら教室を飛び出した。
「やーーーめーーーてーーーー!!下ろせよばか!!何人の事荷物みたいに肩に担いでるんだ侮辱罪で訴えるぞ!!」
飛び出したつもりが何故か僕は大屋君に担がれており、とんでもないその行動に僕の言葉もとんでもないものになってしまった。
「うるせぇな、どチビが」
「ちっ!?チビって言うな気にしてるんだぞ何だよちょっと背が高いからって自慢されたって別に全然うらやましくないぞばか!!」
何処へ連れていかれるのか。
僕を肩に担いだまま、大屋君の足は止まらない。
ミッチーに助けを求めたけど、他人のフリをされて脳内でミッチーに五寸釘を100万本くらい打ち込んだ。
しばらくバタバタ暴れていた僕も、疲れてついに大人しくなる。
「ねー大屋君、どこ行くの…」
話しかけても返事はもらえない。
どうしよう、学校辞める気だからってちょっと暴言吐き過ぎたかな。
怒ってるのかな。
リンチされるのかな。
いっぱい殴られるのかな。
そしてついにその肩から降ろされる時が来た。
地面に足をついた途端、僕はボクサーのように大屋君にシュシュっと拳を繰り出した。
「………」
「べ、別にもう僕学校辞めるし!!殴られても別にいーし!!泣くだけだし!!」
まあ、僕の繰り出す拳も、大屋君のお腹辺りで顔に届きはしないんですけどね。
ごめんねちびで!!
何か迷惑かけてますか!!
「石塚斗真」
「な、何だよ」
「誰かに呼び出されたら俺に言え。俺がお前の名前名乗って代わりに相手してやる」
は。
「何でそんな事、」
「来るとしたら2年の浅間だな。現時点ではこの学校のボスだ」
「………僕やっぱり学校やめる」
「テメー、話聞けや。俺が代わりに相手するっつってんだろ」
「何で大屋君がそんな事するの。後で僕にお金ちょうだいとか言うんでしょ絶対」
あげないからな、って涙目になって睨めば、大屋君は呆れたように溜め息を吐き出した。
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