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⑫(side:ミッチー)
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「お前、俺と縁切ったんじゃねぇのかよ」
ドアを開けて俺を確認するとすぐ、元治は不機嫌そうにそう言って睨んできた。
「そんな事言ったっけ?」
「テメー…」
とぼけたフリして元治の横をスルリと通り抜ける。
部屋にはまた伊吹が遊びに来ていた。
「何かお前ら最近よくつるんでるね」
「コイツが勝手に来んだよ、今のお前みてぇに」
「あ、そう」
伊吹と目が合えば、よっと手を上げられ俺も軽く挨拶をする。
元治と仲がいいから、自然と伊吹と俺も仲が良くなった。
そのうち二人のウマが合わなくなって喧嘩ばっかになっても、俺と伊吹だけはそれまで通り普通の友達として関係を築いてきた。
けどいつからか、二人で遊ぶ事はなくなっていた。
伊吹がいる時は、必ず元治もいる。
元治抜きでコイツと会ったのっていつだったか。
思い出そうとしても思い出せない。
まあ、どうでもいいか。
「ミチルー、コイツの話聞いた?」
「話ってアレか、塚ちゃんの事か」
「コイツの舌テクがさー、全くきかねぇってどう思うよ?」
「拒否られてんの、今日生で見たわ」
「は、マジ?」
「マジ。笑い死ぬかと思った」
「だろ!?俺も話聞いた時笑い止まんなくて死ぬかと思ったし」
思い出したのか、言いながら伊吹はニヤニヤと口元を緩ませ始めた。
「テメーら一回口閉じろ。マジで殴る」
「へいへーい」
「てか元治さー、一体どういうつもりだよ」
「何がだよ」
「塚ちゃんと付き合うのか?」
「だったら何だよ」
「は、」
嘘だろコイツ…。
冗談で聞いてみた質問だっただけに、俺の口が開いたまま塞がらなくなってしまった。
伊吹をチラリと見やれば、首を傾げて目を逸らされる。
コイツ、何か知ってやがる。
「付き合うっても、お前塚ちゃん好きじゃねーんだろ?」
「うるせぇな、何だっていいだろ」
「まーまーミチル、コイツもコイツなりに頑張ろうとしてんだよ。見守ってやってくんね?」
「……頑張るってなに」
「色々、と?」
「いろいろ…」
もうなんかイヤな予感しかしない。
「とりあえず塚ちゃんボロボロにしたら俺マジでお前に喧嘩売るから」
「上等だよ」
「だからそういうのやめろってお前らさあ」
「元治と縁切ったら伊吹、お前とも切るからな」
一人へらへらしてる伊吹になんとなくムカついて、ちょっと焦らせてやるつもりで発しただけの言葉だったが、何故か伊吹を物凄く不機嫌にさせてしまったようだ。
「は、何で俺とまで切るとか言うんだよ」
「塚ちゃんがボロボロになったら、お前も同罪だからだよ、ばか」
「は、意味わかんね」
「何がわかんね?元治と一緒になって、お前も楽しんでんだろどーせ。言っとくがな、塚ちゃんは俺の大事な友達なんだよ。傷つけたら、例えお前らだろうが俺は絶対許さねぇから」
「誰も一緒になって楽しんでねぇよ」
「どうだか」
後ろめたい事があると、コイツは人の目を見なくなる。
それは誰でもそうかも知れないけど、コイツのは露骨すぎんだよ。
だから今だって、俺の目見れてねーだろ。
「塚ちゃん塚ちゃんて、どんな野郎だよ。一回会ってみてぇわ」
ふてくされながらソファに沈む伊吹に、ハムスターで遊んでいた元治がチラリと目をやった。
「コイツ、今日ちゅうしてたぜ」
「は、誰と」
「塚ちゃんと?」
「あれは仕方ねぇだろだって」
塚ちゃんにお願いされたらイヤとは言えない。
別に軽くちゅうするくらい、どって事ないし。
って言えるのは相手が塚ちゃんだからだろうけど。
「なんだよ…」
何故か伊吹に物凄いジト目で睨まれる。
そんな垂れ目で睨まれたって、全然怖くねーんだけどな。
いやでも、コイツも顔が整ってるだけに凄まれると物凄く心臓に悪い事は知っている。
サラサラで長めの茶髪を鬱陶しそうにかき上げながら、伊吹は俺から目を逸らすと軽く舌打ちした。
「…感じわる」
「お前がな」
「は、何で俺」
「…お前、塚ちゃんとちゅうしたんなら俺とだって出来んだろ」
「……………は」
何でコイツとちゅうとか。
「出来るわけねーだろ、バカなんですか?」
素でそう返したら、元治がぶっと吹き出した。
「お前ら痴話喧嘩すんな、うぜぇ」
「いやいやいやいや、待って、痴話喧嘩ってなに?お前もバカなんですか?」
なに、どいつもこいつもバカなのか。
何か頭が痛くなってきて、とりあえず俺はもう一度今日来た目的を果たそうと口を開いた。
「元治」
「あ?」
「まあ、せいぜい頑張れ」
「………」
「じゃ、俺帰るわ」
塚ちゃんは一筋縄ではいかない。
元治もそれをよく理解しているはずだ。
だから俺は皮肉を込めてそう言ってやった。
そしたらコイツはきっとムキになる。
ムキになって何とか塚ちゃんを手籠めにしてやろうと意地になる。
そうやってどんどん、あの子にハマっていけばいい。
気付いた時にはもう、手遅れだぞ、元治。
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